2024年02月07日
サマリー
◆政府はカーボンニュートラルの実現と産業競争力強化・経済成長を共に実現するため、今後10年間で150兆円超の官民協調でのGX(グリーントランスフォーメーション)投資を目指す。2023年5月に成立した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」に基づき、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)」等を定めた。
◆GX推進戦略では「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げる。同構想では、2023年度から10年間で20兆円規模にて発行する「脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)」を財源とした先行投資支援を行い、民間投資の呼び水にする。また、カーボンプライシング(CP)制度を導入し、償還財源とするとともに、先行投資のインセンティブにする。
◆2024年2月に発行されるGX経済移行債は、世界初の政府によるトランジションボンド(個別銘柄)となる。ESG投資に積極的な投資家が増える中、ESG投資対象となり得る国債発行の意義は大きく、投資家のニーズは高いものと推察される。
◆CP制度としては、排出量取引制度の本格稼働(2026年度)のほか、排出枠の有償オークション(2033年度)や炭素賦課金(2028年度)の導入が予定されている。賦課金等は、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、低い負担から徐々に引き上げられる。GXへの取組み前倒しの積極化と、期待した排出削減につながるか注視する必要があろう。
◆先行投資支援先として、分野別投資戦略にて水素等のサプライチェーン構築や多排出産業の製造プロセス転換など16分野に計13兆円が示されている。先行投資後は、環境改善効果の検証や情報開示などの透明性確保が投資家層拡大の上でも重要となる。これらの先行投資をどのようにして残り130兆円の民間投資につなげていくかが、今後のGX実現に向けたカギとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日