政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)実現への道筋と課題

2024年から本格稼働する「成長志向型カーボンプライシング構想」

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サマリー

◆政府はカーボンニュートラルの実現と産業競争力強化・経済成長を共に実現するため、今後10年間で150兆円超の官民協調でのGX(グリーントランスフォーメーション)投資を目指す。2023年5月に成立した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」に基づき、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)」等を定めた。

◆GX推進戦略では「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げる。同構想では、2023年度から10年間で20兆円規模にて発行する「脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)」を財源とした先行投資支援を行い、民間投資の呼び水にする。また、カーボンプライシング(CP)制度を導入し、償還財源とするとともに、先行投資のインセンティブにする。

◆2024年2月に発行されるGX経済移行債は、世界初の政府によるトランジションボンド(個別銘柄)となる。ESG投資に積極的な投資家が増える中、ESG投資対象となり得る国債発行の意義は大きく、投資家のニーズは高いものと推察される。

◆CP制度としては、排出量取引制度の本格稼働(2026年度)のほか、排出枠の有償オークション(2033年度)や炭素賦課金(2028年度)の導入が予定されている。賦課金等は、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、低い負担から徐々に引き上げられる。GXへの取組み前倒しの積極化と、期待した排出削減につながるか注視する必要があろう。

◆先行投資支援先として、分野別投資戦略にて水素等のサプライチェーン構築や多排出産業の製造プロセス転換など16分野に計13兆円が示されている。先行投資後は、環境改善効果の検証や情報開示などの透明性確保が投資家層拡大の上でも重要となる。これらの先行投資をどのようにして残り130兆円の民間投資につなげていくかが、今後のGX実現に向けたカギとなろう。

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