サマリー
- 経済見通しを改訂:2013年1-3月期GDP二次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+3.1%(前回:同+3.1%)、2014年度が同+0.7%(同:同+0.7%)である。
- 「アベノミクス」の中間評価:本予測では、安倍政権の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)の中間評価を行った。「アベノミクス」は、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、という「三本の矢」から構成される。日本経済復活の起爆剤となり得る適切な経済政策であり、とりわけ金融政策は着実に成果を上げている。今回のレポートでは、日銀が掲げる「物価上昇率2%」目標の実現可能性を検証した。GDPギャップの縮小のみによって物価目標を達成するのは困難であり、期待インフレ率の大幅な上昇が不可欠である。また、当社の短期マクロモデルを用いて「アベノミクス」の経済効果を定量的に検証すると、円安・株高の好影響は、長期金利が大幅に上昇しない限り、相殺されないとみられるため、フローの経済は当面好調を維持する見通しである。他方で、中長期的な財政赤字問題に対しては、日本政府が従来以上に腰を据えて取り組むことが必要になるだろう。
- 「アベノミクス」が抱える3つの課題:「アベノミクス」は3つの課題を抱えている。第一に「財政規律の維持」に失敗すると、「トリプル安(債券安・株安・円安)」を招くリスクがある。第二に、現時点では 「中長期的な経済体質の改善・構造改革」が不十分だとの指摘が根強い。第三に、インフレが進行する中、雇用者の所得が増加しないとの懸念が存在する。今後、安倍政権は、①社会保障制度の抜本的な改革などを通じて財政規律を維持すること、②規制緩和、TPPへの参加、法人実効税率の引き下げなど本格的な成長戦略を強化すること、③政労使の三者が一定の痛みを分かち合う形で、雇用者所得の増加を実現すること、という3点に積極的に取り組むべきである。
- 日本経済のメインシナリオ:日本経済は2012年3月をピークに景気後退局面に入ったものの、2012年11月をボトムに景気は底入れしたとみられる。今後に関しても、日本経済は、①米国・中国経済の持ち直し、②復興需要の継続と大型補正予算の編成、③日銀の大胆な金融緩和を受けた円安・株高の進行、などに支えられて景気拡大が継続する見通しである。上記③に関連して、当社は、ドル円相場は緩やかな円安・ドル高基調で推移すると予想している。また、実体経済との比較からは、現状の株価が依然として過大評価された水準だとは言い難いと考えている。
- 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①「欧州ソブリン危機」の再燃、②日中関係の悪化、③米国の財政問題、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要である。
- 日銀の金融政策:黒田新総裁率いる新生日銀の金融政策は順調に滑り出した。ただし、2013年10月の「展望レポート」発表のタイミングで、物価目標達成への慎重な見方が浮上し、日銀はリスク資産(ETF等)の買い増しなどの追加金融緩和を実施することとなろう。
【主な前提条件】
(1)公共投資は13年度+12.4%、14年度▲15.8%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは13年度100.0円/㌦、14年度100.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は13年+1.9%、14年+2.3%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年7月号(No.476)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年06月24日
-
地政学的緊張が促すAI開発競争
2026年06月24日
-
日本経済見通し:2026年6月
覚書後の中東情勢の影響とAI需要の下支え/消費減税と所得連動給付
2026年06月23日
最新のレポート・コラム
-
資金循環統計からみる家計金融資産の現状
2026年3月末の金融資産は2,386兆円に。現預金比率は47%に低下
2026年06月26日
-
日本での実質株主確認制度導入に向けた議論
会社法中間試案では2つの制度の導入を検討
2026年06月26日
-
米国:AI活用は続くが、「選別」も本格化へ
「選別」は過剰投資を抑制も、信用リスク・資産価格への波及に注意
2026年06月25日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の成長戦略、骨太の方針で実質賃金は本当に増加するのか?
①時間あたり労働生産性の引き上げ、②1人あたり労働時間の増加、の2点が1人あたり実質賃金の増加に向けたカギ
2026年06月25日
-
「形式的・機械的な議決権行使」批判について考える
2026年06月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
-
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
-
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

