サマリー
- 経済見通しを上方修正:2012年7-9月期GDP二次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+1.0%(前回:同+0.7%)、2013年度が同+1.1%(同:同+0.9%)である。2011年度の国民経済計算確報発表を受けて、公共投資の見通しを大幅に上方修正した。
- 日本経済はどこから立ち上がる?:日本経済は海外経済の悪化などを背景に、2012年3月を「山」に景気後退局面入りした可能性が濃厚である。本予測では過去の日本経済の回復局面を検証することなどを通じて、今後の日本経済回復の条件を探った。過去の日本経済の回復局面を検証すると、1990年代以降、景気回復のドライバーが「財政・金融政策」から「輸出」へと明確に変化していることが確認できる。今後の景気後退局面でも、海外経済の回復などによる輸出の増加が日本経済底入れの発火点となる可能性が高いだろう。今後の日本経済は、様々な景気下振れリスクを抱えつつも、メインシナリオとして、[1]米国・中国経済の持ち直し、[2]震災発生に伴う「復興需要」、[3]日銀の追加金融緩和、という「三本の矢」に支えられて、2013年以降、緩やかな回復軌道を辿る公算である。
- 今後の世界経済をどう見るか?:今後の世界経済を展望する上で鍵になるのは、欧米など先進国の内需低迷を、新興国の政策発動でどの程度相殺できるか、という点である。当社は今後の世界経済に関して、[1]先進国の内需、[2]新興国の政策発動、を外生変数とする定量的なシミュレーションを行った。結論として、新興国が積極的な財政・金融政策の発動を実施すれば、先進国の内需低迷をある程度相殺することは可能だとみられる。ただし、「欧州ソブリン危機」の深刻化、米国の「財政の崖」、など複数のリスク要因が同時に起きるケースでは、新興国の政策発動のみで世界経済を支えるには力不足であると考えられる。
- 中国経済はハードランディングに向かうのか?:本予測では日中関係の悪化が日本経済に与える影響に関するシミュレーションを行った。日中関係の悪化は、2012-13年度の合計で、わが国のGDPを0.1~0.4%程度下押しする計算となる。中国経済は、当面財政・金融政策発動の効果などから緩やかに持ち直す見通しである。ただし、中長期的に見ると、中国で大規模な設備ストック調整が発生するリスクを警戒すべきだ。2030年にかけて、中国の潜在成長率は+5%台へと大きく減速する可能性があろう。
- 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、[1]「欧州ソブリン危機」の深刻化、[2]日中関係の悪化、[3]米国の「財政の崖」、[4]地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、[5]円高の進行、の5点に留意が必要である。
- 政府・日銀に求められる政策対応:わが国の政策当局は、日本経済再生に向けて、[1]トップリーダーの確固たる「ビジョン(国家観・哲学)」に基づいた体系性のある政策を実行、[2]「内需」や「需要サイド」のみに固執するのではなく、「外需」や「供給サイド」も重視したバランスのとれた経済政策を実施、[3]消費税引き上げ、社会保障費を中心とする歳出削減などを通じて「財政再建」を実現、[4]政府・日銀がより一層緊密に連携、という4点を柱に据えた経済政策を断行すべきだ。特に、上記[4]に関連して、グレンジャー因果性を用いた分析などによれば、日銀のさらなる金融緩和を通じた円安・株高の進行などがデフレ脱却に有効である。
【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+13.5%、13年度▲1.2%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度79.7円/ドル、13年度80.0円/ドルとした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は12年+2.2%、13年+1.8%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日