サマリー
(1)経済見通しを改訂:2012年1-3月期GDP二次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+2.4%(前回:同+2.3%)、2013年度が同+1.3%(同:同+1.3%)である。
(2)日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、メインシナリオとして、(1)東日本大震災発生に伴う「復興需要」、(2)米国・中国を中心とする海外経済の持ち直し、(3)日銀の追加金融緩和が見込まれること、という「三本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く見通しである。
(3)日本経済の中長期的リスク:「経常収支赤字化」:本予測では、日本経済が抱える様々なリスク要因を多面的に検証した。日本経済が抱える中長期的なリスク要因は「経常収支赤字化」である。当社は、わが国の中長期的な経常収支の動向に関する定量的なシミュレーションを行った。基本シナリオでは、2020年時点でわが国の経常収支は24兆円程度の黒字を維持する見通しである。リスクシナリオとして、円高、原油高、世界経済の悪化などが複合的に発生するケースでも、よほど劇的な変化が起きない限り、わが国の経常収支は容易には赤字化しない公算である。ただし、製造業の海外流出が加速し「悪い空洞化」が進行する場合には、将来的な経常収支赤字化の可能性が高まるものと考えられる。わが国の政策当局は、将来的な日本経済を取り巻く環境の激変を念頭に置き、経済の「供給サイド」の政策と、財政再建を中核に据えた適切な政策対応を講じる必要がある。
(4)日本経済の短期的リスク:ギリシャのユーロ離脱など:2012-13年度にかけて日本経済が抱えるリスク要因としては、(1)ギリシャのユーロ離脱などを受け「欧州ソブリン危機」が深刻化、(2)地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、(3)円高の進行、(4)原発停止に伴う生産の低迷、の4点に留意が必要である。第一に、欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定したところ、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。今後、ギリシャのユーロ離脱などをきっかけに「欧州ソブリン危機」が深刻化した場合、日本経済が「リーマン・ショック」並みの打撃を受ける可能性を否定し得ない。第二に、イラン情勢緊迫化などを背景に原油価格が高騰した場合、日本企業の交易条件悪化などを通じて、日本経済が「スタグフレーション(不況下の物価高)」に陥るリスクがある。第三に、ドル円相場は、当面、比較的狭いレンジ内で推移する見通しであり、急速な円高・ドル安は回避されるものと考えられる。ただし、「欧州ソブリン危機」の深刻化などを受け「質への逃避」の動きが強まり、円相場が独歩高になるリスクには一定の留意が必要となるだろう。第四に、わが国ですべての原発が停止した状態が続くと、実質GDPに対しては▲0.5%~1%超の低下圧力がかかる可能性がある。
(5)日本銀行の金融政策:日本銀行は少なくとも2014年度いっぱい、政策金利を据え置く見通しである。円高が進行するなど、景気下振れ懸念が強まる局面では、日本銀行が、拘束力のあるインフレターゲットの導入や、基金の残高積み増しなどを含む、さらなる金融緩和策に踏み切る可能性が生じよう。
【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+7.6%、13年度▲3.4%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度79.0円/ドル、13年度79.0円/ドルとした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は12年+2.2%、13年+2.6%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年4月号(No.473)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年03月25日
-
中東情勢緊迫化と軍事費増加は世界経済の重石に
2026年03月25日
-
日本経済見通し:2026年3月
春闘賃上げ率5%台維持も、中東情勢悪化が新たな景気下押し要因に
2026年03月24日
最新のレポート・コラム
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業のAI導入・利用に必要な人権の視点
世界で進展するAI規制の展開と日本の現状を踏まえて
2026年04月10日
-
遺言のデジタル化に向けた検討
「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」における、遺言の手続きの見直しについて
2026年04月10日
-
米国:停戦合意後も残る景気悪化リスク
原油高×金融リスクの増幅=フィナンシャル・アクセラレーター
2026年04月09日
-
新NISAがもたらす投資の定着と、次世代へ繋がる資産形成
2026年04月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

