アベノミクス新・第3の矢「介護離職ゼロ」と介護費抑制の同時実現に向けて(前編)

~中重度の特養ホーム入所待機者の解消が急務~

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2016年02月25日

  • 亀井 亜希子

サマリー

◆アベノミクスの第2ステージの目標である「一億総活躍社会の実現」のために、新・第3の矢「安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)」が掲げられている。この中で、特別養護老人ホーム(特養ホーム)等の施設サービスを中心とする介護サービスの拡充が計画されている。


◆介護サービスは、介護保険制度の2000年4月の施行以降、全ての要介護者区分において、施設等サービス(施設・居住系サービス)よりも、在宅での居宅サービスの受給が進んでいる。そのうち、中重度者(要介護3~5)の居宅サービスの受給者数が増加しており、これが介護費増加、介護離職の主因となっている。


◆介護費用の面では、中重度者の居宅サービスの受給者の中には、施設等サービスを受給した場合よりも介護費負担が高額となるケースが生じており、経済的な負担が重くなる傾向にある。


◆介護者の負担面では、自宅での中重度者の介護時間は半日~終日必要となるケースも多く、医療・看護連携の必要性や、介護者にとって精神的・身体的負担も重いことから、介護・看護を理由に離職する者が増えている。これが社会的な課題となっている。


◆新・第3の矢は、在宅介護から施設介護への回帰政策であるとの批判がされることも多い。しかし、特養ホームへの入居待機者数は、2014年時点で52.3万人にのぼり、特に中重度者の待機者が多い。特養ホームの整備によって入所待機者の解消が進めば、介護者の負担を軽減し離職を減らすだけでなく、介護費の抑制も同時に可能となるだろう。

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