EUの金融規制改革における英国のポジション

~英国は金融立国としての地位を保てるか~『大和総研調査季報』 2012年春季号(Vol.6)掲載

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

英国は、欧州連合(EU)の財政規律強化のための新財政協定への不参加を決めた。この行動の背景には、EUの金融規制改革に対する英国の国益追求の二面性がある。

銀行の自己資本規制を含むストラクチャー改革、「リビング・ウィル」(RRPs)の議論などにおいて、英国はEUの提案よりも厳格なスタンダードの実施を検討しており、先駆者となっている。これには、金融セクターの規模が大きく、国際的なスタンダードでは不十分という判断が働いている。

英国は、EUワイドの金融取引税(FTT)の議論においては、絶対反対の姿勢を崩さず、実現に向けた重しとなっている。これには、FTTの導入が、世界最大の金融センターであるロンドンをターゲットにしたものであるという判断が働いている。

EUワイドのFTT導入の可能性は低いが、ユーロ圏ワイドの導入にとどまったとしても、英国は取引量の大幅減少など大きな打撃を被る可能性がある。英国とユーロ圏との間に金融ビジネス上の密接なつながりがある中で、英国が独自の制度設計を追求することの意味が問われているともいえよう。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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