2011年11月22日
サマリー
◆システム上重要な金融機関に関する破綻処理の枠組みは、システム上重要な金融機関の破綻処理を実行可能にすることによって、経営陣がシステム上重要な金融機関は破綻した場合の影響が大きいため、いざというときには政府が救済してくれると期待して過度なリスク・テイクを行う、というモラルハザードを抑止することを目指している。
◆本枠組みは、システム上重要な金融機関について、事前に再建・破綻処理計画を備えさせておき、当局がその金融機関を破綻処理することが可能かどうかを評価し、破綻処理可能性を向上するため必要であれば金融機関の業務慣行や組織構造を変更することを求めることを認めている。実際に破綻処理を行う際には、当局に、経営陣の交代や経営権の取得や資産・負債の移転など破綻処理に関する幅広い権限を認め、一定の範囲で債権者の権利も制限することも認めている。
◆また、本枠組みは破綻処理のために資金が必要な場合、当局がその資金を提供したときは、その損失について株主、(無担保)債権者、金融システム全体から補償を受けるよう規定すべきとしている。当局による一時的な資金の提供は、民間資金では秩序だった破綻処理が達成できないなどの条件を満たした場合のみに行い、モラルハザードを抑制することが目指されている。
◆本枠組みは破綻処理の国際的影響にも留意しており、各国当局は破綻処理措置が他国の金融の安定にもたらす影響を十分考慮することを求めている。また、当局は金融機関に関する情報など破綻処理に関する情報を外国当局と共有できるようにすべきとしている。また、金融機関の母国当局と進出先の主な外国当局で、破綻処理に対処するグループを形成することを求めている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
カバード・ボンド、「ベイルイン」の対象外か?
規制上の優遇措置からカバード・ボンド市場の更なる発展が見込まれる
2012年02月09日
-
UKフィニッシュ、海外オペレーションは除外?
ICB最終報告に対する政府見解:リングフェンス規制の適用除外も検討
2012年01月12日
-
英国銀行規制改革、スタンス軟化の兆し
ホワイトペーパー公表:「UK フィニッシュ」は健在も、レバレッジは軟化
2012年06月20日
-
EUベイルイン、シニア債を満期で異なる扱い?
ディスカッション・ペーパー公表による議論再開:法案の公表は6月か
2012年05月11日
-
バーゼルⅢが銀行に与える影響に関する調査
世界大手行全体で、実質的最低水準達成に4,856億ユーロ不足(昨年6月末時点)
2012年05月25日
-
欧州、「銀行同盟」創設は当面見送りか(速報)
EU危機管理枠組みの法案:EU統一の預金保険スキームの提案なし
2012年06月07日
-
EUの金融規制改革における英国のポジション
~英国は金融立国としての地位を保てるか~『大和総研調査季報』 2012年春季号(Vol.6)掲載
2012年07月02日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日