金融機関の破綻処理に関する国際的枠組みの創設

破綻処理制度に関する国際的スタンダードを提示し、法改正が必要な国も

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サマリー

◆2011年11月3日・4日に開催されたG20カンヌ・サミットにおいて、システム上重要な金融機関(SIFI)に対する一連の措置が承認された。これらの措置には、(1)各国の破綻処理制度を改革するための評価基準の策定、(2)グローバルなSIFI(G-SIFI)に関する破綻処理可能性の評価等、(3)G-SIFI に対する(バーゼルⅢを上回る)上乗せ資本規制の賦課、(4)より強力で実効的な監督、から構成されており、本稿では(1)(2)で示されたシステム上重要な金融機関に関する破綻処理の枠組みについて解説する。

◆システム上重要な金融機関に関する破綻処理の枠組みは、システム上重要な金融機関の破綻処理を実行可能にすることによって、経営陣がシステム上重要な金融機関は破綻した場合の影響が大きいため、いざというときには政府が救済してくれると期待して過度なリスク・テイクを行う、というモラルハザードを抑止することを目指している。

◆本枠組みは、システム上重要な金融機関について、事前に再建・破綻処理計画を備えさせておき、当局がその金融機関を破綻処理することが可能かどうかを評価し、破綻処理可能性を向上するため必要であれば金融機関の業務慣行や組織構造を変更することを求めることを認めている。実際に破綻処理を行う際には、当局に、経営陣の交代や経営権の取得や資産・負債の移転など破綻処理に関する幅広い権限を認め、一定の範囲で債権者の権利も制限することも認めている。

◆また、本枠組みは破綻処理のために資金が必要な場合、当局がその資金を提供したときは、その損失について株主、(無担保)債権者、金融システム全体から補償を受けるよう規定すべきとしている。当局による一時的な資金の提供は、民間資金では秩序だった破綻処理が達成できないなどの条件を満たした場合のみに行い、モラルハザードを抑制することが目指されている。

◆本枠組みは破綻処理の国際的影響にも留意しており、各国当局は破綻処理措置が他国の金融の安定にもたらす影響を十分考慮することを求めている。また、当局は金融機関に関する情報など破綻処理に関する情報を外国当局と共有できるようにすべきとしている。また、金融機関の母国当局と進出先の主な外国当局で、破綻処理に対処するグループを形成することを求めている。

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