サマリー
◆足元の経済指標によれば、米国経済は企業・家計ともに政府閉鎖による悪影響から回復しつつあり、底堅く推移している。ただし、家計をめぐっては主体や階層間の格差が広がる「K字経済」が一段と進む可能性がある。2025年に成立したトランプ減税2.0による連邦個人所得税の税還付が2026年2月から本格化するため、2026年春頃までは高所得者ほど還付を通じて所得が押し上げられる。他方で、低中所得層は2025年末にオバマケアの「強化された税額控除」が期限切れとなり、医療保険料負担が増加したことで、購買力が低下する恐れがある。
◆こうした税額控除の扱いは議会でも大きな争点となり、2026年度予算の議論は難航した。民主党は税額控除の延長合意を予算成立の前提としたのに対し、共和党は全面的延長には慎重で、つなぎ予算で時間を確保した上で議論する構えを見せたことで、予算は年度開始に間に合わず、2025年10~11月には過去最長の政府閉鎖が発生した。その後11月半ばに成立したつなぎ予算によって、税額控除の議論は12月以降に持ち越された。年が明けて議論は加速し、2026年1月には下院で民主党が主導する3年間の延長案に17名の共和党議員が賛成して可決に至った。支持基盤が民主党寄りか競合が激しい選挙区の共和党議員は、中間選挙を前に世論に配慮したと考えられる。一方、上院ではなお一部の共和党議員が慎重姿勢を崩しておらず、成立の行方は不透明だ。
◆延長に慎重な背景には、税額控除が実質的に民間保険会社への補助となっていることや財政赤字を増やすことへの警戒感がある。下院で通過した3年間延長案は今後10年間で約800億ドルの財政赤字増加につながり、恒久化すれば3,500億ドル規模に膨らむ見通しだ。延長されれば低中所得層の負担増を和らげる面でプラスとなる。他方で、関税収入をめぐる不確実性もある中で、財政悪化が一層進めばタームプレミアムを押し上げ、米10年債利回りへの上昇圧力となり得る。金融環境に敏感な設備投資や住宅投資、耐久財消費の重石となる可能性があるだろう。
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