サマリー
◆2025年1月28日・29日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが4.25-4.50%と、4会合ぶりの据え置きとなった。今回の決定は市場参加者にとってサプライズとはならなかった。声明文では、雇用環境や物価に関する表現が小幅に修正された程度で、ほとんどは据え置きとなった。パウエルFRB議長のFOMC後の記者会見では、トランプ新政権の政策運営に関する不確実性が高い中で、FRBが様子見モードに転換していることが示唆された。
◆次回(3月18日・19日)のFOMCでの利下げ再開を期待する見方もあったが、パウエル議長は会合毎に判断するといった含みは持たせず、政策スタンスの調整を急ぐ必要はないと答えたことから、現時点では、3月のFOMCでの利下げの可能性は高くないということだろう。
◆今後に利下げを再開するか否かは、結局のところ、インフレの減速ペースと、雇用環境における変化(=大幅に悪化したり、急激に活況とならない)次第だ。こうしたインフレの減速ペースや雇用環境は、パウエル議長も指摘した通り、トランプ新政権の政策運営によって左右される。注目の移民対策に関しては、不法移民の強制送還や新規流入の抑制が実施され始めている。不法移民の減少や流入減は、労働供給の縮小に伴う失業率の低下をもたらし得る一方、労働需給のひっ迫や賃金上昇圧力の高まりが懸念される。
◆また、関税に関しては、2月1日からのカナダ・メキシコ・中国に対する追加関税措置の実施が示唆されている。トランプ大統領は、不法移民の強制送還に関して、受け入れに難色を示したコロンビアに対して関税の引き上げを示唆したが、コロンビア政府が受け入れに同意したことで実施は見送られた。カナダ・メキシコへの関税の実施、ひいてはインフレへの影響を巡って、トランプ大統領が納得できるような不法移民対策に合意できるかがカギを握ろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米銀最大手、9.7兆ドルの国債保有増加余地
レバレッジ比率緩和、米国国債市場の機能改善をもたらすか
2025年12月16日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

