サマリー
◆5月22日にケビン・ウォーシュ氏が新FRB議長に就任し、6月FOMCで初会合を迎える見通しだ。足元、インフレ再加速への懸念から市場は年内の利上げ転換を織り込んでいるが、景気悪化リスクも併存しており、FRBは難しい政策運営を迫られている。
◆利上げ織り込みの主因である足元のCPIの上昇に焦点を当てると、主としてエネルギー価格の高騰によるものである。CPIスーパーコア(サービス価格からエネルギー・家賃を除いたもの)や賃金上昇率は減速傾向にあるほか、ウェイトの大きい家賃も再加速の兆しは見られない。原油高を起因としたインフレ指標のヘッドラインの上昇を警戒する必要はあるものの、利上げが進んだ2021~2022年のように、広範なインフレ指標が持続的に上昇しているわけではない。
◆雇用環境に関しては、雇用者数や失業率は一見底堅くみえるが、中小企業の雇用マインドは悪化傾向にあり、非労働力人口も増加している。つまり、雇用環境は見た目ほど強くはない。こうした中で、家計は可処分所得の伸びの鈍化を貯蓄率の低下で補ってきたが、その余地は縮小しており、税還付による下支えもはく落していくため、先行きの個人消費には下振れリスクが残る。また、足元の米国経済はAI関連を中心とする設備投資が成長をけん引する投資主導型となっている。設備投資は金融環境に敏感であることから、金利上昇や資金調達環境の悪化には注意が必要だ。
◆以上を踏まえると、金融政策は現時点ではFF金利を据え置きつつ、エネルギー主導のヘッドライン上昇と基調インフレを峻別しながら、インフレと景気減速の双方を見極める姿勢が妥当と考えられる。市場が織り込む年内利上げは、2021~2022年のビハインド・ザ・カーブの反省によるインフレ再加速への警戒が強く反映された結果であり、やや過剰反応の可能性がある。ウォーシュ新議長には、インフレへの警戒を維持しつつも、投資主導の成長構造が抱える景気下振れリスクにも配慮し、過度な引き締めに傾かないバランスの取れた政策運営が求められる。
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