米国経済見通し 政治の季節到来が利下げ時期に影響か

移民抑制や最低賃金引き上げがインフレ圧力を高める恐れ

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2024年06月21日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆6月に公表された5月の主要経済指標を踏まえれば、景気は緩やかに減速しているものの、全体としては底堅く推移している。インフレ指標に関しては、CPI、PPI、輸入物価のいずれも減速感が見られる結果となった。こうした中、市場の利下げ期待は2024年内に0.25%pt-0.50%pt(1回-2回)で推移しており、過度な利下げ期待は抑制されている。

◆景気の先行きに関しては、雇用環境の悪化と超過貯蓄の払底から個人消費の下振れリスクを指摘する見方もある。こうした見方は、需要の抑制に伴うインフレ減速の進展、ひいては利下げの早期化に対する期待を高めることになる。一方、雇用関連の指標は季節調整や移民増の捕捉などでノイズが大きく、現時点で雇用環境の悪化を懸念する必要はない。また、超過貯蓄は払底したとされるが、株高等による資産効果が個人消費を下支えすることで、急激な腰折れリスクは抑制されている。

◆個人消費の急激な腰折れリスクが限定的とみられる中で、インフレ率の先行きに関して、順調に減速するかは不透明といえる。足元で減速感が見られるコアサービス価格に関しては、その内訳項目である家賃の減速ペースが緩やかになるとみられる。また、賃金上昇率と連動するコアサービス価格(家賃除く)に関しても、不法移民の抑制や各州での最低賃金の引き上げなどの施策によって、インフレ圧力が強まる可能性がある。不法移民抑制策や労働政策は、11月に大統領選挙を控える中での世論対策とも考えられ、政治の季節到来がFRBの金融政策運営に不確実性をもたらす恐れがあるだろう。

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