サマリー
◆6月に公表された5月の主要経済指標を踏まえれば、景気は緩やかに減速しているものの、全体としては底堅く推移している。インフレ指標に関しては、CPI、PPI、輸入物価のいずれも減速感が見られる結果となった。こうした中、市場の利下げ期待は2024年内に0.25%pt-0.50%pt(1回-2回)で推移しており、過度な利下げ期待は抑制されている。
◆景気の先行きに関しては、雇用環境の悪化と超過貯蓄の払底から個人消費の下振れリスクを指摘する見方もある。こうした見方は、需要の抑制に伴うインフレ減速の進展、ひいては利下げの早期化に対する期待を高めることになる。一方、雇用関連の指標は季節調整や移民増の捕捉などでノイズが大きく、現時点で雇用環境の悪化を懸念する必要はない。また、超過貯蓄は払底したとされるが、株高等による資産効果が個人消費を下支えすることで、急激な腰折れリスクは抑制されている。
◆個人消費の急激な腰折れリスクが限定的とみられる中で、インフレ率の先行きに関して、順調に減速するかは不透明といえる。足元で減速感が見られるコアサービス価格に関しては、その内訳項目である家賃の減速ペースが緩やかになるとみられる。また、賃金上昇率と連動するコアサービス価格(家賃除く)に関しても、不法移民の抑制や各州での最低賃金の引き上げなどの施策によって、インフレ圧力が強まる可能性がある。不法移民抑制策や労働政策は、11月に大統領選挙を控える中での世論対策とも考えられ、政治の季節到来がFRBの金融政策運営に不確実性をもたらす恐れがあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
米GDP 前期比年率+3.0%とプラスに転じる
2025年4-6月期米GDP:輸入の反動減が押し上げた一方、内需は減速
2025年08月01日
-
FOMC 9月利下げに向けて含みを持たせる
インフレ統計の歪みと雇用統計の弱含みに注目
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日