サマリー
◆2024年6月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+5.4%と7カ月連続で増加したものの、コンセンサス(同+7.2%、Bloomberg調査)を下回った。自動車輸出の回復ペースが限定的だった。輸出金額全体の季節調整値は前月比▲0.2%と4カ月ぶりに減少した。輸入金額は前年比+3.2%と3カ月連続で増加したが、伸び率は大幅に低下した。日本の内需の低迷もあって、エネルギー関連品目で輸入金額の鈍化基調が強まった。季節調整値では前月比+1.6%と2カ月連続で増加した。以上を受け、貿易収支は+2,240億円と3カ月ぶりの黒字となった。ただし、季節調整値で見れば▲8,168億円と37カ月連続の赤字であり、このところの赤字基調が継続している。
◆4-6月期の実質GDP成長率における外需寄与度はゼロ近傍から小幅なマイナスの間を見込む。財の輸出数量は前期比▲0.7%、輸入数量は同+0.1%と試算される。貿易収支で見ると財は前期差▲7,000億円程度、サービス(4月、5月計)は同+4,500億円程度となった。6月の国際収支統計の結果次第ではあるものの、財貿易の弱さをサービス貿易が部分的に相殺すると予想される。
◆6月の輸出数量は前月比+2.1%と2カ月ぶりに増加した。減少基調にあった米国向けや欧州向けが持ち直した。他方、自動車は2カ月連続で減少し全体の足を引っ張った。自動車輸出は1-3月期にかけて低調だったが、足元では挽回生産に遅れが生じているとみられる。輸出数量全体を地域別に見ると、米国向け(同+1.7%)やEU向け(同+2.5%)が増加に転じた一方、アジア向け(同▲0.8%)は減少した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調に転じるとみている。米国向け輸出は底堅く、需要の軟調さが続いてきた欧州では2024年後半から成長率が加速する見込みだ。また、遅れてきた自動車の挽回生産や、世界半導体販売額に見るシリコンサイクル(世界半導体市場に見られる循環)の回復による半導体関連財の輸出増にも期待できる。ただし、日本の輸出管理の強化が一段と強化されることで中国などに向けた先端技術分野の輸出が減少するリスクには注意が必要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
- 
                                    
                                          2024年5月貿易統計 欧州向け自動車輸出が下振れし輸出数量は減少に転じる 2024年06月19日 
- 
                                    
                                          2024年4月貿易統計 自動車輸出の回復が鈍く輸出金額はやや期待外れの結果に 2024年05月22日 
- 
                                    
                                          2024年3月貿易統計 2023年度の貿易赤字は5兆円超も赤字幅は前年度から大幅に縮小 2024年04月17日 
同じカテゴリの最新レポート
- 
                
                
                
                    2025年9月全国消費者物価 政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる 2025年10月24日 
- 
                
                
                
                    2025年9月貿易統計 トランプ関税の悪影響続くも、円安効果で輸出金額は5カ月ぶり増加 2025年10月22日 
- 
                
                
                
                    2025年8月機械受注 非製造業(船電除く)を中心に弱含み、政府は基調判断を下方修正 2025年10月16日 
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
                                
                                    
                                      - 
                                              
                                          第226回日本経済予測(改訂版) 低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証 2025年09月08日 
- 
                                              
                                          聖域なきスタンダード市場改革議論 上場維持基準などの見直しにも言及 2025年09月22日 
- 
                                              
                                          今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは 金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表 2025年09月01日 
- 
                                              
                                          日本経済見通し:2025年9月 トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は? 2025年09月25日 
- 
                                              
                                          中国:2025年と今後10年の長期経済見通し 25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題 2025年01月23日 
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日





