サマリー
◆2024年5月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+13.5%と6カ月連続で増加し、コンセンサス(同+12.7%、Bloomberg調査)を小幅に上回った。季節調整値では前月比+1.2%と3カ月連続で増加した。他方、輸出の実勢を表す輸出数量(大和総研による季節調整値、以下同)は自動車輸出の下振れを主因に減少した。輸入金額は前年比+9.5%と2カ月連続で増加し、季節調整値では前月比+1.5%と2カ月ぶりに増加した。貿易収支は▲1兆2,213億円と2カ月連続の赤字となり、季節調整値では▲6,182億円と36カ月連続の赤字となった。
◆5月の輸出数量は前月比▲4.1%と3カ月ぶりに減少した。欧州向けの自動車が減少し全体を大きく押し下げたとみられる。自動車輸出は前年比で見れば+13.6%と半導体不足の解消により高い伸びとなったが、前月比では再び減少に転じた。輸出数量全体を地域別に見ると、米国向け(前月比▲0.1%)、EU向け(同▲9.9%)、アジア向け(同▲3.0%)のいずれも減少した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調に転じるとみている。米国の民需は底堅く、欧州では2024年後半から25年1-3月期にかけてGDP成長率が加速する見込みだ。またシリコンサイクル(世界半導体市場に見られる循環)の回復による半導体関連財の輸出増にも期待できる。なお、一部の自動車メーカーによる型式指定の申請不正が輸出数量に与える直接的な影響は軽微とみている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2024年4月貿易統計
自動車輸出の回復が鈍く輸出金額はやや期待外れの結果に
2024年05月22日
-
2024年3月貿易統計
2023年度の貿易赤字は5兆円超も赤字幅は前年度から大幅に縮小
2024年04月17日
-
2024年2月貿易統計
価格転嫁が一段と進み輸出金額は3カ月連続で増加
2024年03月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日