サマリー
◆2023年9月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+4.3%と3カ月ぶりに増加した。自動車の挽回輸出や、半導体等製造装置の輸出の減少幅が前月から縮小したことが主因だ。輸出金額全体は季節調整値で前月比+7.2%と2カ月ぶりに増加した。輸入金額は前年比▲16.3%と6カ月連続で減少し、季節調整値では前月比+5.4%と2カ月ぶりに増加した。これを受け、貿易収支は+624億円と3カ月ぶりの黒字となった。季節調整値では▲4,341億円と、赤字幅の縮小が続いている。
◆9月の輸出数量は前月比+6.2%と、8月の急減の反動が表れて2カ月ぶりに増加した。輸出数量は振れを伴いながらも緩やかに増加している。米国やアジア向けの半導体関連財、米欧向けの自動車関連財などが押し上げた。他方、挽回輸出が進んできた自動車は前月から横ばいとなった。地域別に見ると、米国向け(同+5.1%)、EU向け(同+6.7%)、アジア向け(同+9.8%)のいずれも増加した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調が続くとみている。挽回生産の継続により主力の自動車輸出が高水準で推移すると見込まれるほか、米国経済の底堅さが幅広い財の輸出を下支えするだろう。ただし、日銀短観の結果などを踏まえると、海外市場における自動車のペントアップ(繰越)需要は2023年度中に概ね発現しきる見込みだ。また、米欧ではタイトな金融環境の下で企業の設備投資が下振れしやすく、同国・地域向けの資本財輸出については当面低迷が見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2023年8月貿易統計
半導体製造装置の輸出管理強化の影響が全面的に表れ輸出金額は減少
2023年09月20日
-
2023年7月貿易統計
輸入価格が下げ止まり貿易赤字(季節調整値)は前月から横ばいに
2023年08月17日
-
2023年6月貿易統計
貿易収支は23カ月ぶりの黒字転換も季節調整値では赤字が継続
2023年07月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
石破政権の経済政策に求められるもの
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日