サマリー
◆2023年8月の貿易統計によると、輸出金額は前年比▲0.8%と2カ月連続で減少した。7月23日に輸出管理が強化された半導体等製造装置の大幅な減少が影響した。季節調整値では前月比▲1.7%と、輸出数量の失速を主因に3カ月ぶりに減少した。輸入金額は前年比▲17.8%と5カ月連続で減少し、季節調整値では前月比▲2.1%と3カ月ぶりに減少した。貿易収支は▲9,305億円と2カ月連続の赤字となった。季節調整値では▲5,557億円と、赤字幅の縮小が一服している。
◆8月の輸出数量は前月比▲6.6%と3カ月ぶりに減少した。OECD景気先行指数に見る外需は悪くないが、輸出管理強化もあって輸出が下振れした。この影響を均して見れば、輸出数量は緩やかに増加している。地域別に見ると、米国向け(同▲1.0%)、EU向け(同▲12.0%)、アジア向け(同▲8.6%)のいずれも減少した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調が続くとみている。半導体不足の緩和による挽回生産が継続する中、主力の自動車や同関連財が輸出を押し上げよう。ただし、米欧ではタイトな金融環境の下で企業の設備投資が下振れしやすく、同国・地域向けの資本財輸出は当面低迷するだろう。また、資本財の主力である半導体等製造装置は輸出管理強化の影響もあって軟調に推移するとみている。総じてみれば、自動車の挽回輸出の一巡後は輸出のけん引役が不在となる可能性が高い。
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