2020年1-3月期法人企業統計と二次QE予測
コロナ禍で経常利益は大幅減/二次QEは上方修正を予想
2020年06月01日
サマリー
◆2020年1-3月期の全産業(金融業、保険業除く)の売上高は前年同期比▲3.5%、経常利益は同▲32.0%と3四半期連続の減収減益となった。経常利益を要因分解すると、売上高の減少、変動費の増加が全体を押し下げた。季節調整値でも、経常利益は前期比▲11.6%と4四半期連続の減益となった。
◆2020年1-3月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は前年同期比+3.5%と2四半期ぶりに増加した。季節調整値で見ても、前期比+7.2%と2四半期ぶりに増加した。一部業種における長期的な投資が全体を押し上げたようだ。
◆先行きについて、企業収益は製造業、非製造業ともに4-6月期は厳しい結果となろう。製造業においては、欧米等におけるロックダウン措置等による経済活動の停滞が企業業績に鮮明に表れるとみられる。他方、非製造業は、国内における緊急事態宣言等を受けた活動自粛によって、鉄道・航空旅客輸送などの運輸業・郵便業、飲食・宿泊サービス業、娯楽業などの対個人サービス業を中心に減収減益は避けられないだろう。
◆設備投資の先行きについても、短期的にはコロナ禍の影響によって企業収益の見通しが立たない中では、設備投資を先送りする動きが広がる可能性が高い。非製造業を中心に企業のキャッシュフローは急減しており、当面は必要最低限の維持・補修投資中心になるとみている。製造業においても、世界的に工場稼働率は低下しており、能力増強投資は期待できないだろう。
◆今回の法人企業統計の結果を受けて、2020年1-3月期GDP二次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲2.4%と、一次速報(同▲3.4%)から上方修正されると予想する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2020年06月08日
2020年1-3月期GDP(2次速報)
前期比年率▲2.2%と、設備投資を中心に1次速報から上方修正
-
2020年05月22日
日本経済見通し:2020年5月
産業連関表で読み解く「コロナ禍」-経済的打撃の網羅的整理と展望-
-
2020年04月20日
2020年3月貿易統計
新型コロナウイルスの影響で輸出は大幅減
-
2020年05月29日
2020年4月鉱工業生産
自動車工業を中心に大幅減産、5月は更なる減産の見込み
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月25日
2021年のASEAN5経済見通し
景気回復は年後半に加速。懸念が多いタイとフィリピン。
-
2021年01月25日
税金読本(16-2)税務署への財産債務の申告と国外転出時みなし譲渡益課税
-
2021年01月22日
金融商品の評価
金融商品の価値はどのように算定するのか?
-
2021年01月22日
2020年12月全国消費者物価
コアCPI変化率は約10年ぶりに▲1%台まで下落幅が拡大
-
2021年01月26日
コロナ禍における地球環境問題
~ CO₂削減に向けたムーブメント ~
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く