サマリー
◆2025年のユーロ圏経済の実質GDP成長率は前年比+1.3%と、2年連続で加速し、潜在成長率並みの成長ペースに回帰すると予想する。実質所得の増加に加えて金利低下が追い風となり、個人消費の増加基調が続くことが成長のメインドライバーになると期待される。
◆もっとも、先行きは下振れリスクが大きい状況が続くことになろう。外需を巡る不透明感は強く、製造業の停滞が労働市場の悪化を通じて経済全体に広がるリスクが高まっている。また、政治・政策面では、2月に実施されるドイツでの総選挙が注目されるほか、フランスでの政治混乱が続く可能性が高いことに注意が必要である。
◆2024年に利下げサイクルを開始したECBは、2025年も中立金利に向けて利下げを続けていくと見込まれる。大和総研では、2025年中に4回の利下げを実施し、政策金利が2.00%に達したところで今回の利下げサイクルを停止すると予想する。ただし、インフレ率が落ち着きを見せる中、ECBは景気配慮の姿勢を強めており、景気が想定よりも下振れすることになれば、さらなる利下げも検討されることになるだろう。
◆2025年の英国の実質GDP成長率は前年比+1.4%と予想する。ユーロ圏と同様、英国でも実質所得増加を背景とした個人消費の増加が見込まれることに加え、労働党政権による財政政策が、公的需要を中心にGDPを押し上げる見通しである。一方、増税に対する企業の懸念は強く、税負担の増加は民需の成長を抑制する恐れがある。
◆BOEもECBと同様、2025年も利下げサイクルを継続すると見込まれる。英国ではインフレ率の高止まりに対する懸念が未だ強いことに加え、財政政策の影響を見極める必要性から、利下げペースはこれまでと同様、2会合に1度の緩やかなものとなるだろう。
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