欧州における防衛費増加の進捗と展望

~競争力強化との両立に向けた課題~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載

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2026年07月27日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

2025年に米国で第二次トランプ政権が誕生したことをきっかけに、EUでは急速に安全保障強化への問題意識が高まり、防衛費のさらなる積み増しに向けた動きが加速した。EUの防衛費は2025年の段階でGDP比2%という節目の水準に到達したが、2025年に発表された「欧州再軍備計画」による融資制度が実行フェーズに移ることで、2026年の防衛費はさらに増加する可能性が高い。ただし、フランスやイタリアなど、EU加盟国の一部は、防衛費の増加自体には賛同しつつも、それ以上に財政再建に重きを置いており、財政収支を悪化させてまでの防衛費の増加には消極的である。

EUは防衛費に関して、一時的に財政規律を緩和しているため、これが続く2028年までは財政が防衛費の増加を阻害する要因とはなりづらい。だが、中長期的には財政規律と防衛費の増加の両立がEU加盟国には求められる。

防衛力の強化はEUの優先政策の一つにすぎず、EUにとって最大の優先事項は経済的な意味での競争力強化である。財源が限られる中、成長戦略の要である気候変動対策など、他の政策と防衛力強化のバランスをどうとっていくか、防衛支出をいかに競争力に結びつけるかが課題となる。

大和総研調査季報 2026年夏季号Vol.63

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