サマリー
◆ユーロ圏の2024年4-6月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比+0.3%と、2四半期連続のプラス成長となった。市場予想(Bloomberg調査、以下同)では前期比+0.2%と、1-3月期(同+0.3%)からわずかに成長率が鈍化すると見込まれていたが、予想に反して前期並みの成長ペースを維持する結果となった。成長率自体は決して高いとはいえないものの、ユーロ圏経済の回復の底堅さを確認させる結果であったといえる。
◆国別の結果を見ると、ドイツがプラス成長の市場予想(前期比+0.1%)に反して同▲0.1%とマイナス成長に転じ、期待外れの結果となった。一方で、減速が見込まれていたフランス(同+0.3%)、スペイン(同+0.8%)が前期と同程度の伸びを維持したことが、ユーロ圏全体として市場予想から上振れする要因となった。
◆2024年後半以降のユーロ圏経済については、個人消費をけん引役とした改善が続くと見込む。インフレ率は前年比+2%台まで上昇ペースが鈍化しており、実質賃金の上昇が続くことで、所得と消費者マインドの両面から個人消費を押し上げるとみられる。加えて、ECBは2024年6月に利下げを実施し、先行きも当面の間、利下げを続けていくと見込まれる。金利低下は耐久財を中心とした個人消費や投資にプラスに働く公算が大きい。
◆ただし、なおもインフレ率の高止まりを警戒するECBは、慎重に利下げを進めていくとみられ、景気抑制的な(中立金利よりも高い)金利水準はしばらく維持される可能性が高い。また、景気の拡大ペースが速まれば、かえってそれがECBの利下げペースを遅らせる要因となり得る。こうした状況下で成長ペースの急加速は見込み難く、ユーロ圏の景気拡大はあくまで緩やかに進むことになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日