サマリー
◆インドにおける雇用の問題は、量よりも質にある。インド政府が発表した、2025年の定期労働力調査(PLFS)では、2022年と比べて数値が改善したものが多かった。しかし、雇用の質の面では、低生産性・脆弱な雇用形態・技能のミスマッチという3点において改善の余地がある。
◆3つの課題は、雇用者数を増やすだけでは解消しにくい。労働集約的な工程から高度な工程まで幅広い工程を国内に取り込み、それぞれの学歴層に応じた雇用機会を創出していくことが最大の課題だ。成長の持続性は、現在統計に表れているような「雇用量の増加」よりも、「生産性と所得を伴う質の高い雇用」の先行きに左右されやすい。本稿では、インドが抱える雇用問題克服という観点から、半導体・電子機器サプライチェーン、自動車産業、労働集約型輸出産業の3分野を検討した。
◆現時点でモディ政権の産業政策が十分な「質の高い雇用」を生み出していると断定するには時期尚早である。ただし、電子機器サプライチェーンの工程内深化、内燃機関エンジンからEV(電気自動車)産業への移行、繊維・アパレルを中心とする労働集約型輸出産業の強化は、前者2つの産業で中高技能層、後者で低学歴層に雇用機会を広げる政策として一定の整合性を有する。
◆今後の焦点は、これらの政策の効果が、PLFS等で確認される雇用量の改善にとどまらず、常用雇用の増加、生産性・所得の改善、技能ミスマッチの緩和として表れるかにある。インドでは地方分権度の高さ、州間格差、電子機器サプライチェーンの集積不足といった制約が大きく、中国やベトナムの先例よりも成果の顕在化には時間を要する可能性が高い。
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