サマリー
◆ベトナムの証券市場は上場市場とそれ以外の市場に分けることができる。このうち上場市場は大企業の株式を中心に扱うホーチミン証券取引所と、主に中小企業の株式や国債、社債などの債券の取引が行われるハノイ証券取引所から構成されている。また、上場市場以外の市場としては、未上場株式を相対取引することができるUPCoM市場(Unlisted Public Companies Market)や店頭市場が存在し、上場市場を補完する役割を果たしている。また制度については、2012年6月から上場企業や公開企業に対する情報開示義務が強化され、9月からは上場基準の厳格化が予定されるなど、整備が進んでいる。
◆ベトナムの証券市場は今後も政府主導による活性化策が進むことで、順調な発展が期待される。第1の理由は国有企業の株式会社化と証券取引所への上場が政府によって促進されることによって、上場企業の増加と証券市場の流動性向上が見込まれることである。第2の理由は、2012年3月に承認された「ベトナム証券市場開発戦略2011年~2020年」により、ベトナムの証券市場の発展が促されると期待できることである。
◆ベトナム政府は証券市場の問題点を把握しており、証券市場の発展に向けた戦略を定め、それを実行するための法律を次々と整備している点は評価することができる。しかし、法律で定められた情報開示義務に多数の企業が違反し続けるなど、法律の運用面では課題は残る。この点がベトナムの証券市場の発展を阻害するリスク要因である。今後、ベトナム政府は現実に即した証券市場の改革を進めるなかで、法律に違反した企業に厳格に対処するなど、法律の運用・執行などの制度運営に一層力を入れる必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日