ベトナムの証券市場の概況と課題

法律の実効性を高めることが今後の発展のカギとなる

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2012年09月03日

サマリー

◆ベトナムの証券市場は上場市場とそれ以外の市場に分けることができる。このうち上場市場は大企業の株式を中心に扱うホーチミン証券取引所と、主に中小企業の株式や国債、社債などの債券の取引が行われるハノイ証券取引所から構成されている。また、上場市場以外の市場としては、未上場株式を相対取引することができるUPCoM市場(Unlisted Public Companies Market)や店頭市場が存在し、上場市場を補完する役割を果たしている。また制度については、2012年6月から上場企業や公開企業に対する情報開示義務が強化され、9月からは上場基準の厳格化が予定されるなど、整備が進んでいる。

◆ベトナムの証券市場は今後も政府主導による活性化策が進むことで、順調な発展が期待される。第1の理由は国有企業の株式会社化と証券取引所への上場が政府によって促進されることによって、上場企業の増加と証券市場の流動性向上が見込まれることである。第2の理由は、2012年3月に承認された「ベトナム証券市場開発戦略2011年~2020年」により、ベトナムの証券市場の発展が促されると期待できることである。

◆ベトナム政府は証券市場の問題点を把握しており、証券市場の発展に向けた戦略を定め、それを実行するための法律を次々と整備している点は評価することができる。しかし、法律で定められた情報開示義務に多数の企業が違反し続けるなど、法律の運用面では課題は残る。この点がベトナムの証券市場の発展を阻害するリスク要因である。今後、ベトナム政府は現実に即した証券市場の改革を進めるなかで、法律に違反した企業に厳格に対処するなど、法律の運用・執行などの制度運営に一層力を入れる必要がある。

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