サマリー
◆2023年3月5日に、第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が開幕し、10年にわたり首相を務めた李克強氏が最後の政府活動報告を行った。まず気になったのは、2023年に関する言及が極端に少なかったことである。政府活動報告は、過去の実績の回顧である前半と、その年の政府活動についての案などの後半に分かれる。温家宝前首相と李克強首相の交代時期の2013年には5割強の分量だった後半部分は、2023年には2割弱にとどまった。さらに、2023年の後半部分では、李克強首相独自のキーワードはほとんど使われていない。李克強氏の影響力は、首相退任とともに即時排除されることが示唆されていよう。
◆政府活動報告は2023年の8項目の重点活動任務を掲げたが、上位5項目には、2022年12月に開催された中央経済工作会議で示された2023年の経済政策運営上の5つの重点がそっくり再掲された。党と政府にはそれぞれの役割分担があると思うのだが、両者が完全に一体化したとの印象を受ける。全人代も習近平氏の独壇場となろう。
◆2023年の政府成長率目標は前年比5.0%前後に設定された。ただし、昨年が同3.0%成長にとどまったことを考えると、今年はその反動が期待できるはずである。2023年は2年連続の目標未達成は許されず、超過達成を前提にやや低めの政府成長率目標が設定された可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:習3期目政権、最初の全人代の注目点
2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に「5%前後」か
2023年02月22日
-
中国:人口減少・少子高齢化と成長力の低下
短期的に再び人口増加の可能性もいずれ不可逆的な人口減少へ
2023年01月23日
-
習近平一強の中国はどこへ向かうのか
~20回党大会と党人事を読み解く~『大和総研調査季報』2023年新春号(Vol.49)掲載
2023年01月23日
-
中国:リベンジ消費で23年は5.6%成長へ
「ウィズコロナ」への不可逆的な転換。懸念は住宅市場と外需
2023年01月20日
-
中国が「ゼロコロナ」政策を完全放棄
景気下振れリスクは低減。日本のインバウンドにはずみも
2022年12月27日
-
2023年の中国経済見通しは上振れも
「ウィズコロナ」への転換。試練の後に消費主導で景気回復へ
2022年12月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日