中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方

追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く

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2025年06月24日

サマリー

◆中国語の「内巻」とは過剰な内部競争により、全員が消耗することをいい、英語の「Involution」の訳語である。自動車産業で起きているのは、行き過ぎた価格競争による不毛な消耗戦であり、収益率は大きく低下している。中国の自動車産業はEVの伸長を背景に、スポットライトを浴びることが多いが、国内では「内巻」に巻き込まれ、疲弊しているというのが実情であろう。

◆今年の「6.18」ネットセールは家電や自動車の買い替え促進のための補助金政策が、売上を押し上げると期待されたが、一部地方の補助金の払底が抑制要因となったようだ。補助金を利用して家電を購入する人々にしてみると、補助金額には限りがあり、政策の恩恵を早く享受したいとのインセンティブが働く。家電などについて、2025年1月~5月までの好調が今後も持続できるか否かは、補助金政策の持続性に依る。また、補助金による需要喚起は需要の先食いの面があり、山が高ければその反動減も深くなることに注意が必要であろう。

◆米国は2025年4月9日、中国以外の国・地域に対する相互関税のうち、10%のベース関税のみを発動し、上乗せ関税は90日間の停止措置とした。中国からの輸入には一時は2月からの累計で145%の追加関税がかけられていたが、中国以外の国・地域への上乗せ関税の90日間停止措置によって、中国からの迂回輸出は温存された可能性が高い。米トランプ大統領にとって、貿易赤字は「悪」であり、この間に貿易赤字が急増し、米国に迂回輸出の拠点と見做された国・地域については、7月上旬以降、上乗せ関税がかけられたり、さらなる追加関税措置が講じられたりする懸念がある。こうした国・地域に進出している日本企業にとって、大きなリスク要因となろう。

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