サマリー
◆中国国家統計局によると、2022年末の人口は14億1,175万人となり、前年末比で85万人減少した。ここ数年で出生率が急速に低下した背景には、①1979年から2015年まで続いた「1人っ子」政策の弊害など構造的な要因に、②「ゼロコロナ」政策という特殊要因が加わったことがある。「ウィズコロナ」政策に転換したことにより、2023年以降、一時的に出生率が上昇し、人口が再び増加する可能性は高い。しかし、右肩下がりのトレンドに変化はなく、その後は不可逆的な人口減少が続くことになろう。
◆人口の高齢化も急速に進んでいる。中国国家統計局によると、中国が高齢化社会となったのは2001年、高齢社会となったのは2021年であった。国連の人口予想によると、2034年には超高齢社会に突入する。
◆中国の人口ボーナス値のピークは2010年であった。少子高齢化の進行で中国の経済成長力は一段と低下する可能性が高い。労働投入量の減少、高齢者社会保障負担の増加、貯蓄率の低下が、経済成長を押し下げるのである。李克強氏が首相に就任した2013年以降は、「人口ボーナス」に代わる「改革ボーナス」が注目された時期もあった。しかし、改革機運は低下し、「改革ボーナス」という言葉自体、目にする機会は減ったように感じる。中国の人口ボーナス値は今後も超長期にわたり低下が続くとみられ、「中国の経済成長力は一段と低下する可能性が高い」という巷間よく指摘される結論は変わるまい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:リベンジ消費で23年は5.6%成長へ
「ウィズコロナ」への不可逆的な転換。懸念は住宅市場と外需
2023年01月20日
-
中国が「ゼロコロナ」政策を完全放棄
景気下振れリスクは低減。日本のインバウンドにはずみも
2022年12月27日
-
2023年の中国経済見通しは上振れも
「ウィズコロナ」への転換。試練の後に消費主導で景気回復へ
2022年12月20日
-
中国:不動産問題が経済・金融リスクに
経済工作会議、2023年は成長・雇用・物価の3つの安定を重視
2022年12月19日
-
中国経済見通し:上海都市封鎖の二の舞か?
広東省で感染者が急増する中での「ゼロコロナ」政策の行きすぎ是正
2022年11月22日
-
中国:景気テコ入れ、本気モードは来春か
まだ続く政治の季節。新首相に花を持たせる?
2022年10月26日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日