サマリー
◆2013年3月1日、国務院弁公庁は、国五条と呼ばれる不動産価格抑制策を公表した。
◆この通知で発表された項目のほとんどは2010年から行われてきた一連の不動産価格抑制策を再確認・再徹底するものである。しかし、項目の中で、譲渡所得税を厳格に20%徴収することが明記されたことは注目される。この項目が追加された背景には不動産売却時の徴税に関する問題がある。中国で住宅を売却する際には、原則的にキャピタルゲインの20%の譲渡所得税が売り手に課されるが、例外的に取得価格を証明することができない場合は、売却額の1~3%(多くの地方では1%)を納税することも可能であるとしている(5年以上自己使用し、かつ家庭で唯一の生活用住宅の売却は免税)。住宅価格が高騰している状況では後者の納税方法が有利である。そのため、ほとんどの人が意図的に取得価格を証明せずに後者の納税方法を選択している事態となっている。
◆今後地方政府が具体策を打ち出すまでに、駆け込み需要の発生によって中古不動産市場が短期的に過熱する可能性がある。譲渡所得税の対象は、法律上は売り手であるが、実際は買い手が売り手の代わりに税金を負担する状態がまかり通っている。そのため買い手は実質的に税金が引き上げられる前に中古不動産を購入する可能性が高い。
◆地方政府が具体策を打ち出した後に、中古不動産市場が冷え込むかどうかは地方政府が発表する具体策の内容に加え、それをどの程度厳格に実行するかにかかっている。これまで中古不動産を売買する際に厳格に20%の譲渡所得税が適用されていなかった背景の1つには、当局の担当者が取得価格を調査する手間を惜しんだといった事情もあった。仮に、地方政府がこのような状況から脱却し、厳格に具体策を実行した場合、実質的な増税によってコストが増加する中古不動産の販売は低迷すると考えられる。一方で、20%の譲渡所得税と関係のない新築不動産の販売は拡大すると見込まれよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日