NISAの進捗度と家計マネーの海外シフトの実像

当面は国内成長分野への資金供給より資産所得倍増を優先へ

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サマリー

◆NISA(少額投資非課税制度)の口座数は堅調に増加しているが、足元の動向を踏まえると、政府目標の達成については慎重に見極めていく必要がある。NISAの買付額は巡航ペースを大幅に上回り、政府目標の前倒し達成が視野に入る。個人は、2024年にNISAで日本株を購入する一方、利益確定等の売りが膨らみ、全体として売り越しとなった。

◆近年、NISAを通じた家計マネーの海外シフトが進展している。2024年の対外証券投資は、2023年から約2.5倍の11兆5,066億円の取得超と、データを遡れる2005年以降で最大となった。NISAを通じた家計マネーは将来に向けた長期資産形成を目的とした資金であるケースが多いことなどから、今後も円安方向に作用すると想定される。

◆投資信託残高(ストック面)から見た家計マネーの海外シフトについては、円安進行という為替要因もあり、2020年後半から大きく進展し、投資信託の外貨建比率は2024年に5割超まで上昇した。また、2000年代半ば以降の海外シフトの局面と比べると、外貨建投資信託の構成は「債券」から「株式」へと大きく変化している様子が分かる。

◆家計マネーの海外シフトは、家計部門の現預金を国内の成長分野に供給して日本経済の成長と資産所得の増加をもたらす「成長と資産所得の好循環」にとって対応すべき課題となり得る。「成長と資産所得の好循環」を実現するには、日本企業の成長期待を高めていくことが本質的に重要であり、NISAの「国内投資枠」という案も考えられる。

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