新型コロナ下での家計金融資産の動向と2021年の展望

「つみたてNISA」の成功体験が家計の長期資産形成の追い風へ

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  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆家計金融資産残高は、2020年3月末を底に緩やかな拡大傾向にあり、2020年9月末に前年比+2.7%の1,901兆円と過去最高を更新した。上場株式と流動性預金の見通しを踏まえると、家計金融資産残高は12月末に再び過去最高を更新する公算が大きいと考えられる。

◆投資信託については、主要株価指数が史上最高値を更新している米国株式市場の強さや世界的な株価上昇等を背景に「アクティブ(北米型)」「パッシブ」への資金流入が目立つ。さらに、世界的なESG・DXブームを追い風に、ESG・DXを投資テーマとした「アクティブ(テーマ型)」の人気が高まっている点も注目される。

◆現在、つみたてNISA口座の運用成績は、その多くがプラスになっており、20~30代の若年層をはじめとする長期志向の個人投資家は「投資の成功体験」を実感しつつあると思われる。このことが、長期分散積立投資のさらなる普及へとつながり、家計の長期的な資産形成に向けた動きを一層促すことに期待したい。

◆また、個別の世帯については、新型コロナ危機の影響で収入が大幅に減少して厳しい状況に置かれた世帯が増えており、そうした世帯では消費を切り詰め、さらに貯蓄を取り崩しているケースも多いとみられる。政府による今後の給付金等の家計支援策においては、経済的に厳しい状況に置かれた世帯に的を絞った対応が一層重要になってくるだろう。

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