家計の現預金に吹く高インフレの逆風

資産形成におけるインフレリスクを再認識へ

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サマリー

◆2023年12月末に過去最高を更新した家計金融資産は、2024年1~3月期の株高を踏まえると、同年3月末に再び過去最高を更新したと推測される。家計金融資産の構成比を確認すると、日本の現預金志向は依然として強い。先行きについては、2024年1月に始まった新しい少額投資非課税制度(新NISA)を追い風に、「貯蓄から投資へ」と舵が切られるかに注目したい。

◆日本証券業協会の調査によると、新NISAの2024年1~3月期の買付額(4兆6,822億円)のうち「国内株」は47%となり、日本の株式市場にも個人の投資マネーがしっかりと流入した。ただし、日本株の上昇に伴う利益確定売りの動きが強まった影響により、株式売買全体で見ると、個人は2024年1~3月期に日本株を売り越した。

◆今回の高インフレは、個人消費の下押し要因となっているだけでなく、「現金・預金」への資金流入の減少要因になっていると考えられる。当面、高インフレの影響は続く見込みであり、「現金・預金」への資金流入は低水準で推移すると想定される。また、家計の現預金の実質的な価値が大きく目減りしていることにも注意したい。

◆特筆される点として、家計の「現金・預金」(ストック)の実質値が大きく減少し、名目値と実質値が乖離しているという点を指摘できる。その乖離の程度は、四半期データで比較可能な1997年12月以降で最も大きい。こうした状況は、将来のために現預金を貯めても、それ以上のペースで消費者物価が上昇し、現預金の実質的な価値が減少している状況であり、現預金以外を通じたインフレ防衛も検討すべきと考える。

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