2026年01月08日
サマリー
◆投資環境のデジタル化は、とりわけソーシャルメディアを通じた詐欺行為や不適切な宣伝・販促活動など、新しい投資者保護上の課題を浮き彫りにした。証券監督者国際機構(IOSCO)はオンライン起因の投資被害に対処すべく、投資者保護に関する複数の取組みを展開している。2025年11月には、「個人投資家オンライン安全ロードマップ」という包括戦略の一環として、ネオブローカーに関する最終報告書(以下、最終報告書)が公表された。
◆ネオブローカーとは、オンライン専用の投資サービスを提供し、魅力的なインターフェースやソーシャルメディアを活用して顧客を獲得するブローカー(証券業者)である。特に若年層や投資初心者をターゲットに、売買手数料を低額ないし無料とする一方、売買価格差や為替手数料、付随サービスの提供などによって収益を得ている。最終報告書はネオブローカーの潜在的リスクとして、売買手数料収入以外に依存するビジネスモデルが利益相反につながる可能性や、実際の費用負担を隠した宣伝・販促活動、デジタル依存の運営によるシステム障害への脆弱性を挙げている。
◆最終報告書はIOSCOメンバー(規制当局)に対し、①個人投資家への誠実・公正な対応、②手数料の適切な開示と広告の透明性、③付随サービス提供時の収益開示と同意手続き、④取引関連収益と最良執行の考慮、⑤ITインフラの強化というネオブローカーに関する五つの勧告を指針として考慮し、必要に応じて規制強化を検討するよう求めている。また、国際的な規制協力や国をまたがる監督基準の策定も、今後の検討課題とされている。
◆日本でもネオブローカーに類似した存在として、スマホ証券が手数料の安さを強みに普及している。売買手数料以外の収益源を確保する必要性が利益相反につながり得るなど、最終報告書で提示されたネオブローカーに関する論点は日本のスマホ証券にも関連があり、デジタル化の進展にともなう投資者保護上の課題や規制の在り方を検討していくことが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
フィンフルエンサーの規制と取締りに関する海外動向
国境を越えた規制協力、フィンフルエンサー向け教育や認証制度の必要性
2025年11月19日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
地域金融力強化プランを踏まえた地銀業界再編の方向性
~再編による期待される相乗効果とは~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載
2026年07月27日
-
予測市場の現状と証券ビジネスへの示唆
未来を価格として表す市場は金融を変えるか
2026年07月02日
-
なぜ、デジタル人民元は「デジタル預金通貨」へ移行したのか
制度変更が示唆する中央銀行デジタル通貨の課題と中国の現実解
2026年06月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

