2026年04月10日
サマリー
◆人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術は、ビジネスの可能性を大きく開くものであると同時に、その誤用による人権侵害が懸念される。AIの誤った利用は、求職者や消費者といった、企業活動における重要なライツホルダー(権利保持者)の権利を脅かしかねない。国際社会は、企業のAI導入・利用が人権侵害につながる危険性に対して強い懸念を表明している。
◆いくつかの国や地域では、AIの開発や導入・利用に対する規制が進展してきた。欧州連合(EU)では、2024年に「AI法(Artificial Intelligence Act)」が発効した。米国では、連邦政府は規制緩和を志向しているものの、州によっては規制が進んでいる。韓国では、2026年1月に「人工知能の発展及び信頼基盤の構築等に関する基本法」が施行された。国や地域によって規制の内容や度合いは異なるものの、共通しているのは人権を重視する視点が読み取れることである。
◆日本のAIに関する取組みは、国際的なルール形成への関与や、法的拘束力のないガイドラインの策定が中心であった。2025年には「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が全面施行されたものの、同法の規定は努力義務にとどまるものであり、事業者等が違反した場合の罰則規定は存在しない。政府の原則レベルでは人権の重要性が示されてきたものの、成文化された法のレベルでは「人権」の用語が登場することはなく、AIの導入・利用に伴う権利侵害に対する規制的な側面は弱いと考えられる。
◆諸外国ではすでに企業のAI利用が求職者や消費者の権利侵害につながりかねないことを示す事例が存在している。日本でも、企業にはAIの導入・利用に際し、その人権侵害リスクを踏まえた対応が求められる。そのためには、現代の企業に求められる人権尊重の基本的な理解や取組みを確実にすることが有効であると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
複合危機の今、求められる人権尊重の取組み
第14回国連ビジネスと人権フォーラムで再確認された企業の責任
2026年01月20日
-
「ビジネスと人権」をめぐる日本企業の対応
人権デュー・ディリジェンスの実施はどこまで進んでいるか
2024年02月14日
-
人権尊重に関する企業評価と日本企業
Corporate Human Rights Benchmarkからみる現状と課題
2024年06月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
実運用段階に入った国連管理型カーボンクレジットの利用可能性
供給制約と利用制度の要件を踏まえたクレジット活用の視点
2026年09月04日
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
ボランタリー・カーボン市場(VCM)の動向と国際取引の課題
高品質クレジットの流通を支える市場・制度基盤の整備
2026年08月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

