2024年02月14日
サマリー
◆1990年代以降、人権を尊重する責任はあらゆる企業に求められるという考え方が世界的に広まり、近年では人権デュー・ディリジェンス(人権DD)を法で義務化する国・地域も見られるようになった。本稿では、「ビジネスと人権」が国際規範として成立した経緯を踏まえつつ、「東洋経済CSRデータ」を用いて日本企業における人権方針の策定、及び人権DDの実施をめぐる現状を検証し、今後の課題を議論する。
◆「東洋経済CSRデータ」から2010年代以降の変化を見ると、人権方針を策定する企業は増加しており、2024年版の調査では回答企業の85.0%に達した。一方、人権DDを実施している企業は59.1%、実施していないが検討している企業は14.9%であった。全体として、人権DDの実施状況は人権方針の策定状況に比して低く、実施の拡大が課題である。
◆人権方針の策定や人権DDの実施状況は、時価総額が小さいほど低調になる傾向がある。また、業種による実施・検討状況の差も大きい。しかし、人権を尊重する責任は規模にかかわらず全ての企業にある。また、人権への負の影響を与えるリスクはあらゆる業種に存在する。今後は、時価総額の小さい企業においても人権方針の策定や人権DDの実施の拡大が求められる。業種による差も是正されることが期待される。
◆サプライチェーン全体を視野に入れた、潜在的な人権侵害のリスクの特定・防止、そしてステークホルダーとのコミュニケーションにおいては、人権DDの実施、及びその情報開示が重要な役割を果たす。日本企業には、各種の実務的なガイドライン等を参照しつつ、ライツホルダー(権利保持者)やステークホルダーとの対話にも努めながら対応を加速させることが求められる。
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