サマリー
◆金融庁は、「平成28年度税制改正要望」(平成27年8月)において、「上場株式等の相続税評価の見直し」を盛り込んだ。従来から日本証券業協会が要望していたが、10年ぶりに金融庁の要望に盛り込まれた。
◆上場株式等の相続税評価は、原則として時価で行われているが、その高い流動性がゆえに短期間で大きな価格変動リスクを負っている。にもかかわらず、不動産等の他の価格変動リスクのある資産と比較して不利な取り扱いになっており、家計の「貯蓄から投資へ」を進めようという政策を阻害する制度になっていると言える。
◆本稿では、相続発生日から相続税納付期限日までの株価の変動等を検証した結果、相続した上場株式等の相続税評価額を市場価格の70%とすべきことを提言している。
◆仮に上場株式等の相続税評価額が市場価格の70%になるなど、市場価格より低い価額で評価されることになれば、相続に備えた家計の株式売却が抑制され、株式保有の後押しとなるだろう。また、相続人が相続した株式の全部または一部を売却せずに継続して保有するケースが増え、家計が株式持ち合い解消等の受け皿となり、その株式保有比率が上昇するとともに、家計の株式の長期保有に繋がることが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
-
「103万円の壁」与党修正案の家計とマクロ経済への影響試算(第5版)
所得税の課税最低限を160万円まで引き上げる与党修正案を分析
2025年03月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日