サマリー
◆2016年8月31日に、金融庁は「平成29年度税制改正要望項目」を公表した。金融庁は、上場株式等の相続税の扱いについて3点の要望を行っており、本稿ではこれらについて解説・分析する。
◆金融庁の1点目の要望は、相続時から納付期限までの価格変動リスクを考慮した評価額とすることであり、3点の要望のうち他の資産との評価の平仄を整える観点から最も重要な施策と考えられる。具体的には、プロテクティブ・プットを行うこととした場合のオプション料相当額を控除した評価額とすることが想定される。納税者にとって簡素で分かりやすい制度にする観点からは、平時においてはオプション料相当額を例えば10%などと固定し、危機発生時には別途定めることとするのが望ましいだろう。
◆金融庁の2点目の要望は、相続時から納付期限までの間に株価が著しく下落した場合の評価の特例を設けることである。金融庁は「著しく下落した」の基準を明示してはいないが、法人税における「減損」の基準や相続税の最高税率を勘案すると、50%程度以上の下落が生じている場合、何らか評価額の救済措置が設けられることが望ましい。
◆金融庁の3点目の要望は、上場株式等の物納順位について、第一順位(国債・地方債・不動産・船舶)の資産と同等となるよう、見直しを行うことである。納税者にとっては、上場株式等と不動産のどちらを物納にあてるか選択の自由度が増すこととなる一方、国としても物納財産を速やかに換金し税収にあてることができ、双方にとってメリットのある改正となることが考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
税制改正大綱—資産課税・相続税等の見直し
タワーマンションの建物部分固定資産税は最大7%程度の変動
2017年01月05日
-
配偶者特別控除の拡大では就労促進効果は乏しい
改正案には比較的所得の高い高齢者に減税の恩恵が及ぶ面も
2016年12月02日
-
上場株式の相続税評価額に関する試算
納税者不利としないためには、時価の70%を評価額とすべき
2014年03月18日
-
上場株式等の相続税評価の見直し
金融庁、平成28年度税制改正要望
2015年11月19日
-
配偶者控除改正で家計と働き方はどう変わる?
「夫婦控除」の税額控除額は4.5万円~5.4万円に
2016年09月27日
-
2017年度税制改正でNISAはどう変わる?
金融庁、積立NISAの導入・現行NISAの投資可能期間の恒久化を要望
2016年09月13日
同じカテゴリの最新レポート
-
NISA:つみたて投資枠を未成年に解禁
2026年度税制改正大綱解説(1)NISA改正(こどもNISA)
2026年01月16日
-
確定申告しない株式譲渡所得等の後期高齢者医療制度の保険料等への反映
社会保障審議会医療保険部会が改正方針を示す
2026年01月07日
-
2026年度税制改正大綱解説
給付付き税額控除導入を含めた所得税の抜本的改革が必要
2025年12月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

