サマリー
◆大和総研では日本経済中期予測を半年ぶりに改訂し、今後10年間(2015~2024年度)の成長率を、年率平均で名目+1.2%、実質+1.0%と予測する。物価上昇率は総じて緩やかに加速する見通しだが、日銀のインフレ目標の達成は困難である。短期金利はゼロに据え置かれ、量的な金融緩和も継続されると予測する。
◆世界経済の平均成長率は3.3%と予測する。先進国間の方向感が異なる中、Fedの金融政策変更がもたらす影響は増幅される可能性がある。原油価格の急落が及ぼす影響は国・地域によって異なるが、世界経済全体としては押し上げ材料となろう。
◆日米の金融政策の方向性の差異は当面、為替レートに円安圧力をもたらすだろう。しかし2018年頃に米国の金融引締めは一服し、他方でほぼ同時期に日本の金融緩和に技術的限界が見えてくる。結果として円安トレンドが終息すると想定している。
◆アップサイドリスクとして、円安が継続することで円高期待が反転し国際競争力が回復し、同時に賃金上昇の慣性が復活する中、デフレの悪循環が好循環に反転する可能性がある。ただし金融政策の技術的制約から時間との戦いを強いられるだろう。
◆名目GDP比の基礎的財政収支赤字を2015年度までに半減する目標は射程圏内に入っているが、2020年度までに黒字化する目標は現行制度の下では達成不可能だろう。財政再建とデフレ脱却は対立概念ではなく、同時並行で達成しなければならない目標である。
◆財政再建には歳出削減は不可欠であり、特に社会保障の膨張の抑制が必要である。受益と負担がリンクするような財政制度や、世代間の利害対立を緩和できる政治制度へと改革することは、国に頼らず地域の自立を促していく地方創生対策でもある。
◆目次
- 予測のポイント
- 今後10年の世界経済
- 世界経済の見通しとリスク
- 原油価格の下落が世界経済に及ぼす影響
- 今後10年の日本経済
- 日本経済見通しの概要
- 財政の見通し
- デフレの原因とその処方箋
- 金融政策の見通し
- 為替レートの見通し
- 日本経済見通しの詳細
補論1:バラッサ=サミュエルソン効果と賃金・物価
補論2:空洞化の背景とその影響
- 財政再建に必要な地方創生・歳出抑制策とは
- 国・地方の財政状況(主に歳出面)
- 応能原則と利用者の多様な選択による社会保障給付の重点化・効率化を
- 財政再建に逆行する従来型の地方への財政支援では地方創生にもつながらない
- 財政再建には歳出増をもたらす財政・政治制度の改革も必要
- モデルの概説とシミュレーション
- 今後10年の世界経済
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