サマリー
◆2025年2月、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2024年度第3四半期の運用実績(収益率)を+4.31%と発表した。2024年4~12月の運用実績を年率換算すると+5.72%となり、厚生労働省の想定運用利回りを上回る結果となった。この運用実績を反映すると、公的年金の給付水準もわずかに上昇する見込みである。
◆2024年度の財政検証から積立金の評価方法に「平滑化」が新たに導入された。この仕組みは、過去の平均収益を基に収益の変動を5年間かけて反映させるものであり、年金政策が一時的な市場の変動に左右されることを防ぐ目的がある。実際の評価額は平滑化によって時価評価と差異が生じている。
◆2023年度を例に平滑化の仕組みを示すと、積立金運用実績+55.5兆円に対して、平滑化処理では、5年移動平均による想定損益だけを当期計上し、残りの損益を一旦当期損益から控除する。控除した損益は1/5ずつ5年間で反映するので、2019年度~23年度(今期と過去4期)の今期反映分を加えると、2023年度の計上損益は+31.5兆円となる。
◆平滑化による時価評価との差額は、徐々に反映されるので、2023年度末に約26兆円の未計上の「含み資産」があるといえる。この余力は今後の政策的選択肢を広げる可能性がある。しかし、運用収益が下振れした場合、過大評価された積立金を前提に年金政策を判断することになり、必要な改革が遅れるリスクがある。次回の財政検証に向けて評価方法の更なる検討が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
イタリアISEEに学ぶ、社会保障給付の簡素な判定の仕組み
世帯の所得・資産を一つの指標にまとめる仕組みと、日本の社会保障制度への示唆
2026年10月14日
-
第3号被保険者制度見直しの財政改善効果は厚生年金保険料率0.1%pt分程度
第3号被保険者制度見直しの財政影響を試算
2026年09月25日
-
現役世代の保険料率は引き下げられるか
サービス維持との両立には、給付と負担の改革、DX/AX推進が不可欠
2026年09月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日


