サマリー
◆政府が国会に提出した2025年度の当初予算案は、国会で修正され、2025年3月31日に成立した。野党の要求により減税や歳出拡大を取り入れたが、国債の追加発行はなく、一見すると財政は悪化しないようにみえる。
◆しかし、一般会計の負担を特別会計が肩代わりするため、内閣府の「国民経済計算」(SNA)で考えると、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は0.2兆円悪化する。また、税外収入がなくなり、高校無償化が拡充される2026年度以降では、PB悪化幅は0.8兆円弱に拡大する。さらに、予備費減額について、予算ベースではPB改善効果があったものの、決算ベースでは効果が剥落すると考えられるため、PB悪化幅は1兆円を超える。
◆さらに、米トランプ政権の高関税政策(トランプ関税)の悪影響で景気が悪化し、税収が1.6~3.3兆円減少する懸念もある。
◆政府は国・地方のPB黒字化を財政健全化目標としている。予算修正前の2025年1月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」は2026年度のPBを0.8~2.2兆円の黒字と見込む。だが、予算修正やトランプ関税の影響を考慮すると、PBは2.7~4.3兆円程度悪化して、赤字になることも予想される。財政健全化目標の達成は困難になりつつある。
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