財政政策と金融政策の境界線 -金融政策の進化と副作用としての中央銀行の独立性の危機

財政シリーズレポート3

RSS

サマリー

◆近年は、金融政策ツールの多様化により、金融政策が財政政策に似た機能を果たしうるため、直接的に景気調整について中央銀行に期待される役割が大きくなっている。しかし、金融政策はあくまで自国通貨を安定的に取引の決済に使うことができることを第一義的な目的としている。金融政策が財政政策に似た機能を果たすようになった経緯を振り返り、財政政策と金融政策を分けて考える必要性について述べたい。

◆中央銀行は独立性を保ち、政治に左右されることなく、物価の安定と金融システムの安定のために、十全な政策実行能力を持つことが期待されている。ただ、政府からの中央銀行への強い要請により、金融政策の自由度が著しく低下した事例は非常に多い。近年は、各国が金融市場を通じて密接なかかわりがあるため、中央銀行の政策が財政ファイナンスであるとの評価や誤解を受けるだけで、物価安定のための政策遂行能力が低下した、さらには失ったという懸念につながり、長期金利が急上昇する可能性がある。

◆金融政策は万能ではなく、多くの副作用がある。財政政策と金融政策が、互いに独立性を保ちながら、調和したポリシーミックスを行うことが重要である。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート

同じカテゴリの最新レポート