2025年12月15日
サマリー
◆近年は、金融政策ツールの多様化により、金融政策が財政政策に似た機能を果たしうるため、直接的に景気調整について中央銀行に期待される役割が大きくなっている。しかし、金融政策はあくまで自国通貨を安定的に取引の決済に使うことができることを第一義的な目的としている。金融政策が財政政策に似た機能を果たすようになった経緯を振り返り、財政政策と金融政策を分けて考える必要性について述べたい。
◆中央銀行は独立性を保ち、政治に左右されることなく、物価の安定と金融システムの安定のために、十全な政策実行能力を持つことが期待されている。ただ、政府からの中央銀行への強い要請により、金融政策の自由度が著しく低下した事例は非常に多い。近年は、各国が金融市場を通じて密接なかかわりがあるため、中央銀行の政策が財政ファイナンスであるとの評価や誤解を受けるだけで、物価安定のための政策遂行能力が低下した、さらには失ったという懸念につながり、長期金利が急上昇する可能性がある。
◆金融政策は万能ではなく、多くの副作用がある。財政政策と金融政策が、互いに独立性を保ちながら、調和したポリシーミックスを行うことが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
日本の財政の現状② 歳出と収支
財政シリーズレポート2
2025年07月18日
-
日本の財政の現状① 債務残高と歳入の特徴
財政シリーズレポート1
2025年06月12日
-
PB赤字は2026年度も続く?
予算修正とトランプ関税で3~4兆円の財政悪化も
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

