2026年10月08日
サマリー
◆米国の証券決済・保管インフラを担うDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)は2026年7月15日、大手金融機関やNYSE等と共同で、傘下のDTC(Depository Trust Company)が保管する株式、ETF、米国債をトークン化し、ブロックチェーン上で取引・決済する大規模な本番取引の実証を行った。
◆この取り組みは、株価に連動するだけの「株式風トークン」を発行するものではない。DTCが保管する既存証券に対応し、その証券についてDTC参加者が持つ権利をデジタル化した「デジタル・ツイン」を発行するものである。トークン化された権利は、通常の証券口座上の権利へ戻すこともできる。
◆実証では、担保差入、レポ、株式取引、証拠金、資産移転など、複数の実務的なユースケースが試された。DTCCはこの実証の成果を踏まえ、2026年10月に証券のトークン化サービスのパイロット版を正式に開始する計画である。
◆DTCCが証券のトークン化に乗り出す意義は、極めて大きい。DTCCの取り組みは、既存の証券保管・振替制度を維持しながら、その一部をオンチェーン化するものである。これが実現すれば、市場参加者は従来型の証券インフラを引き続き利用しながら、必要な資産だけをトークン形態へ変換し、担保・レポ・決済などに利用できる。
◆当初の対象資産は流動性の高い株式、ETF、米国債が中心だが、将来的に社債、地方債、投資信託持分、非上場資産等へ広がるかが焦点となる。また、証券をオンチェーン化しても、決済が従来の銀行送金に依存するなら処理全体の効率化には限界があることから、トークン化預金、ステーブルコイン、中央銀行マネー等、決済資産との連携が不可欠となる。
◆2026年10月の正式稼働が予定どおり進めば、証券のトークン化は実証や個別商品の段階から、ウォール街の基幹的なポストトレード業務へ移行する重要な節目を迎えることになる。
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