サマリー
◆2026年9月のFOMC後、米10年債利回りは5%台前半まで上昇した。しかし、その主因は国債需給悪化によるタームプレミアムの拡大ではなく、市場が追加利上げを強く織り込み始めたことである。FF金利先物では2027年末の政策金利見通しが大幅に切り上がり、2027年内に市場は3~4回程度の追加利上げを想定している一方、FOMC参加者の予想は1~2回程度にとどまる。
◆市場が利上げ観測を強める背景には、①原油価格高止まりなどによってインフレ率低下が想定ほど進まないリスク、②AI関連投資を中心に米国景気が過熱感を示すリスク、③生産性改善などを背景として潜在成長率や中立金利が上昇するリスクがある。とりわけインフレへの警戒感が最大の要因だが、現時点で確認できるのは主としてエネルギー価格上昇によるPCE価格指数の上振れリスクだ。家賃は住宅市場の減速を受けて鈍化が見込まれ、スーパーコアも一部業種を除けば安定的に推移している。賃金上昇率もコロナ禍前並みまで減速しており、基調インフレの再加速を示す証拠は限定的だ。
◆景気についても、企業景況感は改善しているものの、個人消費の伸びは過去と比べて特段強くない。米サプライズインデックスやGDPギャップを見ても、需要超過による過熱状態は確認できず、足元のインフレは景気過熱というよりエネルギー価格や関税など供給側要因の影響が大きいと考えられる。また、市場はAI投資や生産性向上を背景とした潜在成長率・中立金利の上昇を織り込み始めているが、その実現を示すデータは十分ではない。CBOはAIによる押し上げ効果を認めつつも、移民抑制による労働力不足が潜在成長率を下押しすると見込んでおり、構造的な成長加速を断定できる状況にはない。
◆総じて、市場は「インフレ率の高止まり・景気堅調・潜在成長率上昇」という強気シナリオを相応に織り込んでいるが、現時点のファンダメンタルズはそこまで強くない。追加利上げは1~2回程度が、足元の物価・景気の実態により整合的である可能性が高く、市場の3~4回という織り込みはやや先走りの可能性がある。むしろ今後警戒すべきは、利上げ観測の強まりによる長期金利上昇が金融環境を過度に引き締め、AI関連投資を含む成長の源泉を損なうオーバーキルのリスクだろう。
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