サマリー
◆7月以降の米長期債・超長期債利回りの高止まりは、利上げ織り込み(短期予想金利)の強化や財政赤字・国債増発だけでは説明しきれない。むしろ、AI投資ブームを背景とした企業の巨額資金調達や、海外投資家による株式・社債への資金シフト、さらには外貨準備運用の多角化といった資金フローの構造変化が、国債需要を相対的に弱めている可能性がある。
◆実際、財政赤字は拡大しているものの、長期債・超長期債の発行額は過去のトレンドに沿った増加にとどまる。一方で、AI投資の拡大に伴い、テクノロジー企業を中心に社債発行や株式発行が増加している。投資家から見れば、株式は高いリターンを享受でき、社債はミドルリスク・ミドルリターンを確保できる。国債以外の投資先の魅力が高まっているといえよう。
◆加えて、ロシア中央銀行のドル建て資産が凍結されたことなどを契機に、各国の中央銀行は外貨準備運用の多角化を進めている。外貨準備運用における金や非ドル資産への配分拡大は、これまで米国債市場を支えてきた海外公的部門の需要を弱める要因となり得る。
◆米長期債・超長期債利回りの高止まりは、国債供給の増加というよりも、企業の資金調達の増加等を背景とした、資金配分の構造変化とみるべきだろう。その意味では、ベッセント財務長官が公表した、バイバックの増額といった「弥縫策」だけで米長期債・超長期債利回りを大きく押し下げることは難しい。
◆米長期債・超長期債利回りの安定には、財政収支の大幅な改善が必要だが、ウェイトの大きい社会保障の抑制はハードルが高い。当面はエネルギー価格や地政学リスクの抑制を通じて、金融引き締めの必要性を低下させるとともに、ドル資産への信認を高める取り組みが重要となる。
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