サマリー
◆2026年5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+17.2万人と、市場予想(Bloomberg調査:同+8.8万人)を大幅に上回る堅調な伸びとなった。さらに、雇用者数は過去分も上方修正された。雇用者数は、FIFAワールドカップ2026に向けた短期的な雇用増も含まれるとはいえ、3カ月連続で力強い伸びとなった。また、景気動向に敏感な民間部門雇用者数(除く教育・医療)も3カ月連続でプラスとなり、前月差の3カ月移動平均は加速した。失業率については、2026年5月は前月から横ばいの4.3%となり、市場予想通りの結果となった。5月の雇用統計は、雇用者数の力強い伸びが目立つ結果だったといえる。
◆もっとも、事業所調査における雇用者数は、他の統計との整合性の面で疑問は残る。労働供給の抑制により、失業率を変動させない雇用者数の増加ペースである「ブレークイーブン雇用」は低下しているとみられる中で、堅調な雇用増が続いたことから、失業率はより明確に低下しても不思議ではない。つまり、足元の事業所調査と家計調査の結果にはやや乖離がある。また、雇用者数について、ADP民間部門雇用者数とBLS民間部門雇用者数を比較すると、足元ではBLSの増加ペースの方が速い。
◆労働需要について、JOLTSの求人件数は4月分が大幅に増加したものの、専門・企業サービスが増加分の多くを占めており、その他の求人件数は大幅に増加していない。この他、企業と個人の雇用に対するマインドは足元で悪化している。以上のように、事業所調査における雇用者数とその他の雇用関連指標での乖離が目立つ状況であり、必ずしも雇用環境全体が堅調といえるわけではない。今後この乖離がどちらに収斂していくのかを注視していく必要があるだろう。
◆最後に金融政策について、2026年6月16日・17日に開催予定のFOMCでは、ウォーシュFRB議長が議長としての初会合となる。インフレ懸念が強い中、堅調な雇用統計が続いていることでFRBは金利据え置きで様子見することが可能となろう。もっとも、市場では様子見に留まらず、2026年内の利上げ織り込みを進めている。堅調な雇用統計が市場の利上げ織り込みを後押しするなかで、ウォーシュ議長とその他のFOMC参加者が、上述したような雇用指標に見られる乖離をどのように評価するかは注目点の一つだろう。
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