サマリー
◆2025年2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+15.1万人と市場予想(Bloomberg調査:同+16.0万人)を下回った一方、前月からは加速した。直近の雇用者数は大幅な伸びとなった2024年11・12月からはペースダウンしているものの、3カ月移動平均で見れば、3カ月連続で好不調の目安とされる同+20万人以上となった。失業率に関しては4.1%と3カ月ぶりに上昇(悪化)したとはいえ、4%前後とされる自然失業率程度と、依然として低水準といえる。総じて見れば雇用環境は底堅く推移していると評価できる一方で、非自発的パートタイム就業者が大幅に増加した点は雇用環境悪化のシグナルの可能性もあり注意を要する。
◆雇用環境の先行きについては、トランプ政権の政策の影響が徐々に強まるとみられる。例えば、トランプ政権が進める政府職員の人員削減に関して、解雇された政府職員がミスマッチ等により民間部門への雇用の移転が進まない場合、失業率の上昇につながり得る。また、追加関税措置についての不透明感も高まっており、企業は新規雇用を積極化しづらいとみられる。各国・地域との交渉が決裂し、追加関税措置がエスカレートすれば、景気の下振れ幅が大きくなり、ひいては雇用環境のさらなる悪化要因となり得る。そして、不法移民政策に関しては、規制強化の結果として不法移民の流入ペースは大幅に鈍化している。新規の労働供給が減少することで、雇用者数の基調はペースダウンする一方、失業率は上昇しにくくなると想定される。
◆金融政策に目を向ければ、雇用統計の公表直後に実施された講演で、パウエルFRB議長は、2月の雇用統計を踏まえて、労働市場は堅調であるとの見解を維持した。金融政策のスタンスについても、足元は不確実性が高いなか、より明確な情報が得られるまで急ぐ必要はないとした。現状の雇用環境の底堅さや、様子見姿勢を維持したパウエル議長の発言を踏まえると、次回3月18日・19日のFOMCでは政策金利の据え置きがメインシナリオとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日