サマリー
◆2024年の米国経済を振り返ると、景気は底堅く推移し、懸案のインフレも緩やかに減速した。9月のFOMCでは利下げフェーズへと移行するなど、ソフトランディングに向けて前進してきたといえよう。
◆2025年の米国経済に関しても、ソフトランディングの継続という基本的な構図は変わらない。実質GDP成長率は減速するが、2025年通年で2%強と底堅く推移すると見込む。インフレに関しては、CPI上昇率の減速ペースが一層緩やかとなるものの、すでに2%台で推移していることを踏まえれば、減速余地が限られてくるのは当然だろう。
◆もっとも、米国経済の先行きは、1月20日に発足するトランプ新政権の経済政策次第で大きく変化し得る。トランプ氏は追加関税措置、移民排除策等を掲げており、その主張通りに実施されれば、景気への悪影響は大きく、インフレも大幅に上昇し、経済はハードランディングへと向かう恐れがある。
◆ただし、米国経済のハードランディングは、現時点ではリスクシナリオといえる。トランプ氏の政策に関しては、共和党議員からも景気や財政への悪影響を懸念する声が上がっている。トランプ新政権は政策内容を調整することが現実的であり、景気や財政への影響は軽減されると考えられる。また、経済政策の実施時期も漸進的なものとなり、その効果の発現は緩やかとなることが想定される。
◆他方で、トランプ氏の不規則発言に翻弄され、市場がリスクオフ傾向を強めたり、企業や家計の経済活動が消極化したりする恐れは残るだろう。また、トランプ氏が景気への悪影響を無視して、追加関税措置や移民排除策に邁進する可能性も否定できない。こうした不確実性の高さが、2025年の米国経済における最大のリスク要因といえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日