サマリー
◆中国国家統計局によると、2026年5月の消費者物価指数は前年同月比+1.2%(以下、断りのない限り変化率は前年同月比)となり、4月と同じ上昇率であった。2026年2月末以降の中東情勢緊迫化の影響が懸念されるが、これまでのところ消費者物価への影響は限定的だ。工業製品出荷価格の内訳を見ると、川上から川下に向かうにつれて価格転嫁が限定的になっている。供給過剰による価格競争が厳しい中国では、最終製品への価格転嫁が難しくなっている可能性がある。
◆もうひとつ忘れてはならないのは「ピッグサイクル」が下落局面にあることだ。豚肉の消費者物価指数構成ウエイトは1.9%程度であるが、価格変動は極めて大きく、物価全体への影響は軽視できない。2026年5月の豚肉価格は▲16.1%となり、消費者物価全体を0.3%pt押し下げた。
◆中国政府が豚肉の供給と価格の安定化に躍起になるのは、それが農産物の安全保障や、通貨価値安定の観点から重要であるためだ。通貨価値安定に関連して、中国政府が毎年の全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)で目標に掲げる物価目標は、コア物価ではなく総合物価である。豚肉価格のボラティリティの高さが消費者物価に大きな影響を与え、それが政府物価目標達成の可否や中国人民銀行の金融政策に影響を与えかねないということだ。
◆足元で「ピッグサイクル」は下落局面にあり、原油高などによる物価上昇圧力を一部緩和している。だからといってそれを「是」とすることはできない。豚肉価格の下落(豚肉の供給過剰)を放置すれば、次の価格上昇(供給減少)局面のボラティリティが一段と大きくなり、物価の安定や農産物の安全保障を脅かすことになるからだ。
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