サマリー
◆10月のCPIが市場予想を下回る軟調な結果となったことで、12月のFOMCでは利上げ幅が縮小するのではないかとの市場の期待が高まった。しかし、賃金上昇圧力は弱まりにくく、需要も依然底堅いことから、こうした市場の期待は楽観的過ぎるかもしれない。
◆FOMC参加者は市場の期待の高まりに対して警告を発し始めた。たとえ12月のFOMCで利上げ幅が縮小されたとしても、FOMC参加者の先行きのFF金利予想は市場の想定を超えてタカ派的なものとなる可能性がある。市場の期待が高ければ高いほど、タカ派的な結果が出た後の落胆は激しくなり、景気の下振れリスクとなり得る。ウォラーFRB理事が警告したように、市場が「深呼吸をして落ち着く」ことができるかが、インフレを抑制しつつ、景気が大崩れしないために重要になる。
◆11月8日に行われた米国連邦議会の中間選挙では、共和党が下院で4年ぶりに多数派を奪還した一方、上院は民主党が多数派を維持した。この結果、2023年1月から始まる第118議会は、上院と下院で多数派が異なるねじれ議会となる。
◆ねじれ議会は民主党・共和党間の政策調整が必要となり、法案成立の難易度は高まることになる。民主党がインフレ圧力を高め得る政策を志向することから、下院を主導する共和党がその歯止めをかけるという意味で、ねじれ議会はポジティブな側面も持つ。しかし、危機対応時の政策実現に時間を要し得ることや、2023年度本予算や政府債務上限問題を巡る不確実性を高めるというネガティブな側面も有する点に注意が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日