サマリー
◆2021年11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+21.0万人と再び減速し、市場予想を大きく下回るネガティブサプライズとなった。他方、失業率に関しては、同▲0.4%ptと大幅に低下し、4.2%となった。失業率は市場予想を下回る(改善)ポジティブな結果となり、期待外れとなった雇用者数のショックを和らげたといえる。
◆他方、新型コロナウイルスの感染状況が大きく悪化しなかった中でも、雇用者数が伸び悩んだ点は注意を要する。高齢者の退職増などが背景となり、労働供給が増えにくくなっている可能性があることから、雇用者数の大幅な増加は期待をすべきではないのかもしれない。また、足下では新型コロナウイルスの新規感染者数が増加傾向にあることに加え、新たな「懸念すべき変異株」であるオミクロン株によって、雇用環境の回復ペースは当面低調となる恐れがある。
◆インフレ加速が継続する中で、12月のFOMCでは2022年内の利上げに向けた裁量を確保するために、テーパリングのペースの加速が議論される予定である。今回の雇用統計では、雇用者数が減速したとはいえ減少しているわけではない。また、失業率が大きく低下したことから、ペース加速に関する議論を妨げるものではない。もっとも、オミクロン株の影響を含め、雇用環境の回復が当面低調となる可能性がある中で、テーパリングペースの加速や利上げを優先するのか、或いは雇用環境の回復を重視するのか、FRBの判断は一層難しいものとなる。
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