サマリー
◆8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+137.1万人、失業率は8.4%となった。市場予想(Bloomberg調査:非農業部門雇用者数同+135.0万人、失業率9.8%)と比較すると、失業率の下げ幅が市場予想を大幅に上回るポジティブサプライズを演出した。米国の雇用環境が引き続き改善していることを確認できる、安心感を与える結果となったといえる。
◆8月の失業率の大幅な低下は、7月末の失業保険給付増額の期限切れに伴う、求職活動の積極化が一因とも考えられる。8月8日には失業保険給付増額を含む大統領令が署名されたが、将来にわたっても給付が継続するか不透明な中で、人々は積極的な求職活動を継続するものと考えられる。ただし、景気の先行きに関する見通しが付きにくいことや、企業の体力が低下している中で、企業の雇用意欲が高まるかが焦点といえる。
◆9月15-16日のFOMCを控えているが、8月の雇用統計が引き続き改善したことで、一層の緩和策は考えにくくなったといえる。ただし、声明文が公表される16日の朝に公表予定の8月の小売売上高が引き続き改善傾向を示すか否かは、金融政策運営の先行きを考える上で重要となる。また、9月に入り、株式市場のボラティリティが上昇しているが、金融システムの安定性を重視するFRBにとって、FOMC開催までに金融・資本市場に動揺が見られれば、警戒を強めることになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日