サマリー
◆2017年3月の非農業部門雇用者数は前月差+9.8万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+18.0万人)を大幅に下回る期待外れの結果となった。非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均も同+17.8万人と、均して見た雇用者数の増加ペースは底堅い状況が続いているものの、3ヵ月ぶりに伸びが鈍化した。
◆非農業部門雇用者数が10万人を下回る低い伸びとなる一方で、3月の失業率は前月から▲0.2%pt低下の4.5%と、2007年5月以来の低水準を記録した。失業率はすでに自然失業率に迫る水準まで低下しているとみられ、労働需給が引き続きタイトな状況にあることが確認された。
◆3月の民間部門の平均時給は前月から5セント上昇、前月比+0.2%となり、市場予想通りの結果となった。また、民間部門時給の前年比変化率も+2.7%と市場予想通りの結果となった。前月の同+2.8%から上昇幅がわずかに縮小しており、失業率が低下し労働需給のひっ迫感が強まる中でも賃金の加速は見られなかった。
◆雇用を取り巻く環境は底堅く、先行きに関して悲観的になる必要はないと考える。ISM景況感指数に見る企業マインドは、3月は製造業、非製造業ともに前月から悪化したが、それでもなお高い水準を維持している。企業による労働需要が足下で急速に縮小しているとは考え難い。
◆他方、労働供給不足によって雇用者数の増加ペースが鈍化する可能性には注意が必要であろう。完全雇用が近づく中、毎月20万人を上回るような雇用者数の伸びを維持することは困難になりつつあると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日