サマリー
◆米トランプ政権の関税政策(トランプ関税)により、世界経済の不確実性は急速に高まっている。不確実性の高まりは日本の輸出に悪影響を及ぼす可能性があるが、とりわけ懸念されるのは4月2日に実施予定の「相互関税」だ。自動車などへの追加関税も実施されれば、日本経済及び世界経済に大きな打撃をもたらす恐れがある。
◆マクロモデルを用いて日本の実質GDPへの影響を試算すると、本稿執筆時点で実施済みの関税措置が今後も継続されると想定した「ベースシナリオ」では、トランプ関税が実施されない場合に比べ、2026年1-3月期で▲0.1%(2029年10-12月期で▲0.2%)にとどまる。だが、自動車などへの品目別追加関税を上乗せした「リスクシナリオ」では同▲0.7%(同▲1.2%)、さらに相互関税(貿易相手国・地域の付加価値税率分も引き上げ)を上乗せした「テールリスクシナリオ」では同▲1.3%(同▲1.9%)へと大幅に拡大する。
◆日本労働組合総連合会(連合)の第2回回答集計結果によると、定期昇給相当込みの賃上げ率は加重平均で5.40%と前年同時期を小幅に上回った。2024年の物価上昇率や企業収益などを見ると、賃上げ率は減速する可能性があった。それにもかかわらず加速した背景には、一部食料品などの価格高騰で賃上げを求める声が急速に強まったことに加え、人手不足で企業間の人材獲得競争が激化していることや、価格転嫁が進みやすくなったことなどがある。食料品の価格高騰が落ち着けば、家計は賃上げをより実感しやすくなり、個人消費の回復を後押しするとみられる。一方、トランプ関税などによって景気が大きく悪化すれば、こうした前向きの動きに水を差す恐れがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
主要国経済Outlook 2025年6月号(No.463)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年05月26日
-
世界経済は落ち着きを取り戻すのか
2025年05月26日
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日