サマリー
◆米欧の景気後退懸念が強まるなど外部環境が悪化する中、経済活動の正常化の進展度合いが日本経済見通しを左右する状況にある。岸田文雄政権は米欧に後れを取っていた経済活動の正常化を加速させようとしており、新型コロナウイルス感染状況の改善などを受け、今秋にも「全国旅行支援」の実施を検討している。水際対策についても、10月を目途に入国者数上限の撤廃や個人旅行の解禁、訪日ビザの免除を検討している。
◆全国旅行支援が2022年10月初めから2023年3月末まで実施される場合、実施期間全体でGDPを2.0兆円(直接効果:1.5兆円、波及効果:0.4兆円)程度押し上げると試算される。Go To トラベルの同1.2兆円を上回る経済効果をもたらすだろう。経済活動が正常化すれば、サービス消費は足元の水準から大幅に上昇し、2022年4-6月期からの回復余地は年率換算で6~14兆円程度とみられる。
◆対円実質為替レートや出国元の経済規模などから感染拡大がなかった場合の訪日外客数を推計すると、2021年は感染拡大と水際対策によって3,540万人(消費額では4.5兆円)程度抑制されたとみられる。水際対策が大幅に緩和されれば、インバウンドの回復により、現在の「悪い円安」は「良い円安」に転じる可能性がある。ただし、2019年の日本の訪日外客数の4割弱を占めた中国と香港については、水際対策を大幅に緩和しても、中国の「ゼロコロナ」政策の影響で本格回復には時間を要するとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日